札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年9月17日金曜日

9月の三水会

 9月15日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は12名。
若林崇雄医師が司会進行。山本和利がミニレクチャーを2つ。地域基盤型教育、糖尿病性腎症。

振り返り5題。

30分後に研修医の講演が組まれているときに救急外来を受診した40歳代男性。先輩医師より診療を依頼される。仕事中の呼吸困難。過呼吸。胸痛なし。心電図のII,III, AVfでST上昇。不安定狭心症から急性心筋梗塞として3次病院に搬送。途中、VFを2回起こす。Clinical pearls:若い男性の過呼吸では基礎疾患を探すこと。胸痛がなく、呼吸困難だけの急性心筋梗塞があること。致死的疾患を除外するための努力をすること。参加者から様々な意見が出た。

40歳代男性の左胸部から背部痛。圧痛あり。筋肉痛を疑う。同伴者から胸部の異常音について言及され、精査の結果、慢性気胸、胸水。病歴だけによる診断の難しさ。身体診察所見の重要性。

患者本人が自宅へ帰りたいが、家人が入院を望む緩和ケア患者への対応。患者・家人への説明の難しさ。在宅ケアの不安(痛みへの対応。急変時の対応)。適切な説明ということが以外と難しい。退院することなく病院で死亡。外出もできず患者本人の希望が叶えられないままであったことがとても残念。参加者の意見:研修医は相手の患者のことを考えながら自分の感情を述べている。自分を患者さんに重ねて見てしまっている。入院適応でなくても家族の希望を尊重すべきか。緩和ケアはドラマ作りである。「介護の抱え込み」防止を考える。地方の在宅介護者の1/4がうつ状態である。町の介護力がシステムとして貧弱である。

初期研修医の報告。過換気症候群の16歳女性が救急車で受診すると一報が入った。患者さんを見る前の間、いろいろなことを考えた。患者が来てみると以前に小児科で受け持った患者さんであった。発作を頻回に起こしている。じっくり話を聴くことで患者を落ち着かせた。前医に対する不安を軽減させ、直前研修したばかりの他院精神科の外来受診にうまく繋げることができた。スーパーローテーションの利点を生かすことができた。参加者から:患者が自分の気持ちを主治医に伝えることは難しいので主治医に手紙を書く。母親と小児患者はセットで考える。

ニポポ卒業生から医療を哲学的に俯瞰。村上春樹の言葉「高くて硬い壁」に対して「卵の側に立つ」に共感。ミッシェル・フーコーの言葉「種の医学」「病の解読のための場所が必要」「医師は肉体を癒す」「正常の確立=異常の排除」「戦争と虐殺」などを解説してくれた。

「総合内科って何」という研修医が行った一般市民向けの講演内容を解説。専門医は専門分化し、それ以外は専門外。専門以外を診ない傾向にある。総合内科を志す医師は少なく肩身が狭い。総合内科医は、「専門外」と言わない。

日本の明日の医療を担うために、我々総合医が頑張らなければ!(山本和利)