札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年9月17日金曜日

動機付け面接法

9月15日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の田村修先生である。参加者は11名。「日常診療で使える動機付け面接法(MI)」はスキルである。

動機の3つの要素は、準備、意志、能力(ready, willing, and able)である。

行動変容の5段階(proshaska):無関心期、感心期、準備期、抗動期、維持期。自信度と重要度を評価する(0-10の10段階で)。

Motivational Interviewing(MI):ミラー、ロルニッツによって開発された対人援助理論。理論は次の3つの理論を基盤としている。1)精神分析理論:両価性の理解、2)クライアント中心療法(ロジャース):共感的応答、3)認知行動療法:ソクラテスの質問法。アンビバレントが鍵。人間関係に影響される(動機は面接者の態度や方法に影響される)。「変わりたい、しかし変わりたくない」と考える。「逆説的反応」を利用する。ソフトに直面化する方法である。本人の口で話してもらう。目的を選ばない。

基本的態度:1)共感性、2)暖かさ、3)誠実さ。「寄り添う気持ちが大切」。
原則:1.共感的応答。受容と同意。ポーカーフェース。謙虚に聴く。解釈の押し付けをしない。2.矛盾を広げる。変化の重要性、懸念の感情、変化の願望、変化の自信を呼び覚ます質問。3)抵抗に逆らわず抵抗とともに進む。抵抗はドラマの幕開け。焦点を移す、視点を変える、枠組みを変える。4)自己効力感を育てる。

5つの方法:OARS
O:Open question(開いた質問), A:Affirm(認めて肯定), R:Reflective Listening(オウム返し), S:Summarizing(要約)+ Change talk(本人が語るときを逃さない)。レジスタンス・トークには反応しない。

面接者が陥りやすい落とし穴:質問攻めで考えさせない、直面化を迫って否認させてしまう、反対の立場に立たせる、本人の意思を引きださない、機が熟す前に拒絶される、非難する態度で委縮させる。
面接のコツは、相手より話は短く、開いた質問で、振り返りを多くすること。

ここでプチ・ロールプレイ。一人は権威的スタイル。もう一人はMI的面接スタイル。傍からロールプレイを見ていて一方的に解決法を述べるだけの権威的スタイルが有効でないことが分かった。患者役はMI的面接スタイルは慣れないため言葉に詰まることもあったが、アイデアを話しやすく、自分自身に自信がつくという感想であった。

次回から感染症シリーズである。(山本和利)