札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年7月31日土曜日

医のプロフェッショナリスム

7月30日、「第42回日本医学教育学会大会」で神津忠彦先生の「医のプロフェッショナリスム」を拝聴した。先生は、日本語に訳せないということは、真に理解されていないからであるという主張から、新しい言葉をできるだけわかりやすい日本語にしている。プロフェッショナリスムは「医師のあるべき姿」と言い換えている。確かにこの方がわかりやすい。クラークシップを「参加型臨床実習」と訳したのは先生だそうだ。またnarrative-based professionalismを「周りの人をそっと見つめる」と訳されていた。
言葉の語義について調べてゆくと、Profession:神に召されて就任する職業;知識と技能を複合して行う職業、サービス、倫理綱領で支配されている。利他的、よいことをプロモートする。社会との契約をして社会が権限を与える。Ism:多義的、理念に裏付けられた人間の在り方、だそうだ。

「医のプロフェッショナリスム」は、方向目標として見つめながら「あるべき姿」を目指すものであり、規範は時代精神を反映する。ヒポクラテスの誓い、養生訓、「扶氏医戒之略」12カ条、ジュネーブ宣言等の内容を検証していった。
医師は、3つのレベルで規範を満たす必要があると述べられた。
1.専門職能集団として:職業能力水準、規範、内部規範
2.一人の医師として:最善の利益、診療能力の向上
3.一人の人間として:利他的、共感、誠実、品位をもつことで信頼、敬意を勝ち取る。

「医師のあるべき姿」を4つに絞ると「利他的」「豊かな学識」「優れた技術」「義務に忠実で礼儀正しい」となる。

「医師のあるべき姿」はP-MEX(professionalism mini-evaluation exercise)で評価できるそうだ。
昨今の医療環境に触れ、医師と患者は対立するものではなく双方向的interactiveなものであること、心の通い合う信頼関係、対話 ゆとりが必要であること、他者への敬意、チーム医療への移行等を強調された。最後に、私生活においても医師には節度が求められるという言葉で講演を終えられた。ゆったりとした静かなトーンで語られる品格のある講演であった。(山本和利)