札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2013年5月13日月曜日

病院総合医カンファレンスin北海道


北海道大学で行われた第4回病院総合医カンファレンスin北海道に参加した。

まず、病院総合医の紹介。議論の進め方の紹介

Case study

66歳、発熱が続いている(比較的徐脈)。悪寒戦慄はない。熱のわりには元気。盲腸癌、虫垂穿孔の既往。旅行歴なし。ペット、温泉なし。腰痛あり。血培は陰性。160cm, 50kg,右耳介後部に腫瘤を触知。ESR:140/h, ALP:2488,CRP:14,  Hb:8.2Ferritin, 14,261,胸部Xp,骨シンチ異常なし、造影CT:異常なし。前立腺に腫瘍なし。

鑑別診断として、悪性腫瘍、IVL,薬剤熱、真菌感染症、結核、悪性リンパ腫,Still病、血球貪食症候群、等が挙がった。

PETで骨髄、耳下腺に集積。耳下腺の生検では、良性の耳下腺腫瘍であった。骨髄穿刺でmetastatic carcinoma in the bone marrowという病理診断がついたが、骨髄生検で確認したところ、前立腺がんによる播種性骨髄癌腫症であった。PAS:1900であり、泌尿器科でホルモン療法をしたところ、解熱した。

 

播種性骨髄癌腫症Disseminated carcinomatosis of the bone marrow ; DCBMは、前立腺癌による独特の転移形式であり、20例ほどの報告があるという。泌尿器科で診断されることは少なく、内科医でも知っておく必要があるようだ。
 
実は前立腺癌に限らず、悪性固形腫瘍の骨転移のうち、原発巣、転移巣ともに結節形成性に乏しく、全身の骨髄へびまん性浸潤性に転移をきたすものである。比較的若年者に多くて、原発の多くは胃癌(90%)でその他大腸癌や肺癌、乳癌、前立腺癌にもみられるという。貧血、腰背部痛、出血傾向が三主徴とされるが最も多いのは全身倦怠感・腰背部痛である。この症例も腰痛がある。初期にALP(主に骨由来)とLDHの急増がみられ、遅れて末梢血液中の骨髄芽球の出現、貧血、血小板数の著明な低下がみられる。画像所見としては骨シンチにおけるsuper bone scanbeautiful bone scan)が特徴的である。単純X線やCT所見では骨破壊は軽度のようだ。確定診断は骨髄穿刺・生検が必須。

 

■高齢者の不定愁訴へのアプローチ(short lecture

具合が悪い、元気がない、食欲がない、等の場合。

病気のonsetは重要。急性の変化は年のせいではない。

ADL, IADLDEATH, SHIFT)を訊く。

4大鑑別疾患

心疾患、感染症、貧血、慢性硬膜下血腫、(甲状腺機能低下症)

薬の変化、

検尿、血液、胸部XP、(頭部CT

最近元気がなくなった2症例を提示。上記のアプローチをした結果、Af,慢性硬膜下血腫の事例を紹介された。

 

■総合医Snapshot diagnosis 1

35歳男性、発熱、倦怠感、胸部XPで肺炎像、一度解熱後、再度発熱。CTで両肺野のairbronchogramがないfinger gloved浸潤像。粘液栓を思わせる所見。

最終診断:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症。

 

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

血液および痰のなかに好酸球が増加していることと、胸部X線写真で肺に浸潤陰影を認める肺好酸球増多症の例として、初めて報告(1952年)。 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は、多くの場合、もともと気管支喘息患者に続発するので、喘息の合併症と言える。診断時の年齢は大半が40歳以下という。女性に男性よりやや多い。ステロイド依存性喘息患者の10%にみられ、また喘息患者の28%がアスペルギルスに対する皮膚反応が陽性であるといわれている。喘息症状、胸部X線所見、皮膚反応、血液中好酸球の増加、血清総IgE値の上昇などが診断の手がかりとなる。胸部X線所見は、一過性、移動性もしくは固定性のびまん性陰影で、病変の活動性と相関するという。

 

■総合医Snapshot diagnosis 2

肺結核で加療後。両側性の下腿浮腫。CTで大動脈の肥厚。

最終診断:IgG4関連大動脈炎。(感染性大動脈炎をまず考える)

 

IgG4関連大動脈炎

IgG4関連疾患は2000年代に提唱された新しい疾患である。組織学的にはIgG4陽性形

質細胞やリンパ球浸潤が涙腺, 唾液腺, 後腹膜, 膵臓, 胆管などで起こり, 臨床的にはMikulicz, 後腹膜線維症, 自己免疫膵炎, 糖尿病, 原発性硬化性胆管炎類似の胆管病変などを呈する全身性疾患であり, ステロイド治療に対する良好な反応性を認める。①血清IgG4の高値, ②本疾患に特徴的な臓器の障害(唾液腺,涙腺, 膵臓, 後腹膜), ③組織学的にIgG4陽性形質細胞とリンパ球の浸潤の確認, の3項目のうち、2項目を満たすことが必要のようだ。

 

Surviving sepsis campaign guide line 2012short lecture

(これまでのguide lineと変わったところ)

救急外来の患者は敗血症として扱う。

3時間で評価。乳酸値、血培、広域スペクトラム抗菌薬、血圧低下。

6時間で評価。治療への反応。ドパミンの評価が下がっている。

乳酸値の正常化を目指す。

プロカルシトニン:初期に感染症の判断には使えない。低値で治療中止の判断に用いる。

 

case study

74歳女性。認知症あり、コミュニケーションが取れない。下垂体腫瘍術後。発熱。CRP:42, WBC:28.000,肺炎像あり、抗菌薬で加療し、一時軽快したが、再度発熱が起こった。

(松浦助教が詳細を報告予定)

 

若い医師の参加が多くて熱気があり、総合診療を展開する上で診断や治療について大変に参考になる有益な会であった。(山本和利)