札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年5月22日水曜日

杉田玄白/華岡青洲


今日の医学誌の講義は杉田玄白と華岡青洲であった。


まずは班員紹介。こちらも定番となってきたようだ。

今回の班は司会班も発表班も同じスライドのデザインを用いて、発表していうる。よく打ち合わせをしてきた証拠だろう。統一感があっていい感じである。


今回の班の発表者は二人で、それぞれ発表の仕方に違いがあり、その対比は面白い。

前半は、Macを片手に教室を歩き回りながらのプレゼンである。途中ところどころにクイズを入れながら興味をそらさないよう工夫している。持ち歩いているMacがかっこいいという評価もあり、カンペのようだという評価もあり難しいところだろう。個人的には会場が暗くなってしまうところでのメモとしてはバックライトがあったほうが見やすいだろう。その点の工夫は認めてあげたいところである。後半は朴訥とした語り口の中に杉田玄白の業績を紹介しつつ、それが後世に与えて影響について語っていた。眠くなったという意見もあるが、語り口調はその人の個性である。内容的にはよくまとまっているし、ストーリーも明確であった。その点は素晴らしいと思う。語り口調に抑揚がないところは、やや眠気を誘うかもしれない。強調したいところで間を置いたり、何度も繰り返したり、発表者自らの感想を述べたりすることで補う工夫があってもいいかもしれない。


今回の班は、発表スライドを少なくして、その分言葉での解説の内容を充実させたようだ。スライドの背景全体に写真を用いて、かなり印象的なものに仕上がっている。参考文献として提示した「プレゼンテーションZen」のような感じである。写真に文字を書くときには、色の対比など気をつけないといけないことが多い。今回はどう系統の色が重なりやや見にくいところもあったが、今までの班にない工夫がなされており、その点は評価したい。

司会班は、議論の内容をかなり絞って提示している。これは議論の引き金としてはかなり有効である。会場からは2-3人の意見が出た。また、司会班があらかじめ用意した内容以外でも質問がいくつか出てくるようになった。素晴らしいことである。こういう双方向の授業がお互いの学びを深めていくのである。

おそらく、学生諸君の中には、質問をしてもいい雰囲気なのでは?という意識が芽生え始めているのだろう。今後は司会班があえてテーマを準備しなくても活発な議論ができるようになるかもしれない。期待したい。

 次の班は華岡青洲である。

 この班は発表内容を3つに絞って、構成している。「プレゼンテーションのコツ」の授業をよく聞いていた成果か、基本を押さえた手堅い内容である。

 

華岡青洲は、世界で初めて全身麻酔薬を開発し、外科手術を行った人である。現代の小説やドラマ・映画にもなっており、かなり有名人かと思ったが、意外に知らない学生が多い。

 

 現代では当たり前かつ必要不可欠となった麻酔薬だが、もし麻酔がない手術があったとしたら? こうした素朴な疑問に、当時の増井梨の手術の体験談を紹介していた。いかに大変で患者・術者ともに苦痛に満ちたものであったかがよく伝わった。学生からも悲嘆の声が漏れていた。

自分の伝えたい内容(ストーリー)をいかに伝えるか? ここがプレゼンテーションで最も大切なところである。自分の考えを支持する根拠を示すのはもちろんであるが、その根拠は容易に相手の頭の中に収まらなければならない。いかにわかりやすいたとえ話やイメージしやすい事象を持ってくるか?ここにプレゼンテーションの差が出るのであろう。

ギャグの質や内容ではない。ストーリーを明確に根拠づけるの組み立てこそが命なのである。あえて反論材料を入れてもいい、その反論材料を明確に否定すれば自分のストーリーは支持される。どのような方法をとるかはその時の伝えたい内容による。このあたりを一般化するのは難しい。

この班は麻酔薬が生まれるまでの歴史と、それによって得られた恩恵と、海外での麻酔薬の歴史を紹介しながら、いかに華岡青洲の麻酔薬が当時画期的であったかを力説していた。

 また、麻酔薬を開発する過程でどうしても必要な人体実験についても言及していた。このあたりの確執が現代の小説や映画となっているのである。知らない学生が多いのには少し驚いた。

司会班は、前の班と同様、論点を絞り込んで質問をしていた。

 「人体実験についてどう思うか?」

 「医師に必要な資質とは?」

やや、概念的で答えにくい質問ではあったが、当てられた学生は自分の考えをしっかりと述べていた。おそらく、当てられなくても意見を言いたい学生はいただろう。もう一息で自発的な意見交換ができそうである。

まだ医学史の講義は10回近くある。活発な意見交換のできる授業となってほしいものである。    (助教 松浦武志)