札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年2月24日日曜日

RS3PE症候群

223日、第266回日本内科学会北海道地方会に参加した。演題発表で興味深い話を聞いた。

NTT東日本札幌病院の渡邉麻子医師の『大腸ポリペクトミーにより改善したRS3PE症候群(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis With Pitting Edema)の一例』である。80歳代女性。咳、両側下腿浮腫、全身倦怠感で受診。多関節痛と胸水の貯留があった。ANA, RF,CCP抗体が陰性であり、RS3PE症候群と診断された。CFS状結腸に大腸ポリープを認め、ポリペクトミーを施行。翌日より、両側下腿浮腫、胸水とも消失したという。

RS3PE症候群の病態に血管新生・血管透過性促進因子であるvascular endothelial growth factor (VEGF)が関与しているという。この事例でもVEGFが高値であったという。VEGF産生腫瘍であったことを示唆する。

RS3PE症候群とはこんな病気である。60歳以上の高齢者に好発し、比較的急性に発症する圧痕浮腫(pitting edema)を伴うリウマトイド因子陰性(seronegative)の対称性滑膜炎(symmetrical synovitis)で、X線上関節破壊がなく、再発・再燃はまれである。(1985McCartyらが提唱)。消化器系、前立腺などの固形癌や悪性リンパ腫の合併が多いので精査必要とも言われている。プレドニゾロンを1015mg/日の内服が有効で漸減する。

RS3PE症候群についてはPMRの類似疾患程度の知識しかなかったが、この発表を聞いて、日々エビデンスが更新されていることを実感した。(山本和利)