この講義・実習は昨年10月に第1回目を行ったのであるが、その復習もかねてOSCE試験直前に同じような内容で実施することになっているものである。
OSCEは臨床実習に出る前の学生が、その最低限の臨床的技術を身につけたかどうかを判定する試験である。
医療面接について言えば、
どのような呼び入れ方をするのか?
どのような事を患者さんから聞き出せばいいのか?
どのような聞き方をすればいいのか?
どのような言葉を使ってわかりやすく患者さんに説明するのか?
どのように医療面接を終了するのか?(クロージング)
何ともおかしな試験だが、臨床に出る前に、まずその「型」だけでもしっかりと身につける意義は大きいと思う。
しかし、前回と同じでは意味がないし進歩もない。
そこで、前回の医療面接実習では、学生同士で面接の練習をする際のシナリオを教員があらかじめ作成して、学生がそのシナリオ通りに演じる形式としたが、今回はシナリオそのものを自分たちで作ってもらった。
患者役のシナリオを自分で作ることで、逆に自分が医師役の時に患者に聞かなければならない点を整理することができるのではないか? そういうねらいを持って、実習に臨んだ。
学生諸君の症例を見ると、同じ腹痛でも、胆のう炎やイレウス・虫垂炎といったおなじみのものから、アメーバ赤痢などというかなりマニアックなものまでさまざまであった。診断することが目的ではないので、最終診断はゴールではないのだが、彼らはこうしたシナリオを作ることで、医療面接上聞くべき項目(家族歴や嗜好歴(酒・タバコ)周囲の状況など)そのものを理解するとともに、(最終診断とした)疾患が、どういう経緯をたどるのかという点について、教科書的な医学用語ではなく、実際の患者さんが表現する言葉として理解できるであろう。そして、病歴がいかにその病気を特徴づけるのかということのさわりだけでも理解していってほしい。
講義後のアンケートでは、自分たちでシナリオを作る事には75%の学生が好意的に受け止めていた。その理由としては大体狙い通りのことが記載してあった。
そうでない25%の学生の中には、「確かに勉強にはなるが、OSCE試験直前の今はシナリオを作るより練習をして場数を踏みたい」というような意見が目立った。
確かに、OSCE直前の今が適切かどうかは議論の余地があるだろう。ただ、OSCEに合格することが目的化しすぎてはいないだろうか?
最終的には疾患を理解し、患者を理解し、適切な診断ができる医師を目指すのだが、、、、その方法論は一概に良い・悪いは決められないのだろう。
教育の難しいところである。 (助教 松浦武志)