札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年10月16日火曜日

発熱カンファランス

1013日、手稲渓仁会病院の岸田直樹先生が行う発熱カンファランス「院内で発生する発熱に強くなる‐発熱を中心に‐に参加した。参加者11名。Fishbowl カンファランス形式(若者に発言してもらい、年寄りは見守る)である。

様々な医療行為の介入に伴う合併症のリスクが高くなる。

シナリオ: 80歳女性。発熱と右腰痛、悪寒戦慄あり。胃癌で腹膜播種。高脂血症の薬を内服。細菌尿があり、シプロキサンの点滴を受ける。3日たっても解熱しない。

Roux-en-Y手術。副鼻腔炎の手術。虫垂炎手術。高血圧、高脂血症。末梢点滴をされていた。BP:98/50mmHg, HR:102/m,37.6, RR:20/m,CVA叩打痛あり。WBC;15000,Hb:10.2g/dl,CRP;13.0, 尿培養:大腸菌(+)。

ここで何を考えるか。「腎盂腎炎」「腎膿瘍」これに加えて「胆嚢炎」「肺炎」「横隔膜下膿瘍」も考えたい。

悪寒戦慄があれば感染症としていいのか? SnNout(除外)/SpPin(確定)を覚える。

Shaking chill(体の震えが止めようとしても止まらない)があると敗血症は?: 感度:45%、特異度:90.3%。

「患者がshakingしていたら、主治医がshakingしろ」

この事例では非感染症は置いておこう。

抗菌薬が無効のとき

・膿瘍、

・薬剤の移行性が悪い:髄膜炎、前立腺炎、眼球炎。

・抗菌薬の容量不足

・当該の菌に感受性がない。

・臨床判断の誤り

腎盂腎炎は解熱するのに34時間、48時間後の発熱26%,72時間後は13%かかる(解熱しないときには腎膿瘍、尿路閉塞を疑う)。

入院時のショック、痛み、リスクが高い人は、72時間待つ必要はない。「高齢者の発熱+最近尿=腎盂腎炎」は誤診の第一歩である。

発熱+背部痛→腸腰筋膿瘍、硬膜外膿瘍、骨髄炎、を疑うこと。

このケースは「腸腰筋膿瘍」であった。セファゾリンに変更し、CTガイド下でドレナージ。薬疹が出現。ユナシンに変更した。症状は軽快し治療終了。

30日後、労作時呼吸困難、SaO2;86%.BP;88/60mmHg, HR:104/m 胸部Xp:異常なし。酸素投与でSa2:95%そのうちに38℃の発熱。

「何が起こっているか?」採血:WBC;15000,CRP;1.1pH;7,5, pO2;52.9, pCO2;31.1, HCO#;24.7,

「肺塞栓」を考える。D-Dimerの感度95%、特異度:45%。D-Dimerは不要。造影CTを行う。

感染の場合

・よくある感染症

・異物

・術後創部感染

非感染の場合

・肺塞栓(14%に出現)

・無気肺では熱は出ない!

39日目に38℃の発熱。謳気、腹部膨満感。水様下痢。腸ぜん動亢進。「クロストリジュウム腸炎」便倍の感度は57%。なぜかWBCが上昇する。

メトロニダゾールで治療。一度改善したが、再度発熱。発熱のみ。カテーテル感染であった。血倍でMRSA陽性であった。治療期間はコアグラーゼブドウ球菌は7日、黄色ブドウ球菌は14日、カンジダは陽性を確認後14日。この事例は血栓性静脈炎も合併していた。

今回の合併症によって医療費は、300万円余分にかかっている(米国では保険でカバーされないので、病院の負担となってしまう)。退院前にニュモバックスを打つこと。

入院後に起こりやすいイベントを熟知していると、適切に対応できるということがよくわかる講義であった。

参考になる話:アセトアミノフェンの使用頻度が増えてから、偽痛風(薬が効かないため)が増えているそうだ。(山本和利)