札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年10月18日木曜日

10月の三水会


1017日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修1名。他:7名。

研修医から振り返り2題。

ある研修医。救急外来症例の一部。薬物大量服用の女性。落葉キノコを摂取後、動悸で受診。トラック荷台から転落後の血気胸。1週間続く腹痛、謳気、嘔吐できた52歳男性。虫垂炎の穿孔。骨盤内膿瘍を形成。

80歳代女性。ある腰痛症の一例。圧迫骨折の既往。MRIL3の圧迫骨折。狭心症、糖尿病、高血圧。頚椎症。153cm、55kg、138/64mmHg ,無症候性細菌尿、鎮痛薬と安静で軽快。第2セフェムを内服してもらった。リハビリ開始。そのうち食欲低下、謳気、腹痛が出現。CTで下行結腸に腸管壁の肥厚、炎症所見、腸管の拡張。WBC;27000,CRP;5.0。ショック症状に移行。心拍数が次第に減少し、死に至った。剖検で、汎発性腹膜炎、偽膜性腸炎の可能性が高い(最終報告未着)。肺血性ショックによる多臓器不全。医師として無力感を感じた。突然の病状悪化に戸惑った。家族は純粋に病気の原因を知りたいということがわかり、ほっとした。偽膜性腸炎の文献的考察。近年、バイナリートキシン例が増加している。

クリニカル・パール;抗菌薬使用や病歴(抗がん剤、高齢者、重篤な合併症、長期入院、けいかん栄養、H2ブロッカー、PPI投与中)から偽膜性腸炎を疑ったら早期にメトロニダゾ―ルやバンコマイシンによる治療を開始すべきである。下痢が出現してからでは遅い。劇症型がある。中毒型巨大結腸症、腸管穿孔などを起こす。症状が揃うのを待っていてはいけない。第三セフェム、ニュウキノロン薬はリスクが高い。WBC>20000,クレアチニン上昇は危険が高い。

入院中の発熱の90%は感染症である。異物を捜す(気管内挿管、経鼻チューブ、CVライン、尿道カテーテル)、ジョクソウ、偽膜性腸炎、の6つを考える。

ある研修医。外来症例。50歳代男性が下血で受診し、病原性大腸菌であった(ベロ毒素が出ると保健所に届け出が必要)。中年女性に多発性神経炎を疑ったが、むずむず足症候群(鉄欠乏性貧血で悪化)であった。慢性咳で受診した70代女性。間質性肺炎であった。

50歳台の男性の不明熱。農業、B型肝炎の既往。収縮期雑音あり。発熱以外の症状なし。尿たんぱく(++)、CRP;7.6、肝機能、腎機能障害。胸部XP,CT[で所見なし。IEを疑ったが、心エコーでIE所見なし。外来でシプロキサンを処方。その後、状態が悪化し、入院となった。MEPMを開始。DICとなる。ヘパリン使用。両肺に浸潤像。高度医療機関へ転院となった。血倍陰性。IEではない。

ステロイドにより回復。発熱前日に農薬を配布していた。診断は急性肺障害という診断になっている。

不明熱レビューを供覧。

ニポポ卒業生。50歳代男性。下垂体腺腫術後。下痢、腹痛、発熱で受診。CTで結腸に浮腫。WBC>15000, CRP;10.0,入院して経過観察したが、下痢が続いている。CF;全体がびらんである。UCを疑う。便培養で偽膜性腸炎であった。メサラジン、メトロニダゾ―ルで症状は軽快したが、CF所見に改善が見られない。UCを考え、ステロイドを使用した。

息切れを訴える肥満中年男性。時々、左半身のしびれが出る。PO2;56,PCO2;37,造影肺CTでは血栓なし、肺野に柵状影。呼吸機能は異常なし。心エコー異常なし。原因不明の低酸素血症。悩ましい。

80歳代女性。数カ月かけて動けなくなった。歩けなくなった。糖尿病あり。プレドニン10mg、アザルピジン内服中。両下肢に紫斑がある。下肢の筋力が明らかに低下。WBC;20000CRP;20。これから精査。血管炎、TTP,感染症等を疑う。

今回は発表数が少なかったので、1例を1時間ほどかけてじっくりと検討を加えた。(山本和利)