札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年10月26日金曜日

北海道における家庭医療の実践


1025日、手稲家庭医療クリニックの小嶋一先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「北海道における家庭医療の実践である。自分自身のことを話すことを通じて「家庭医療」を伝えたい。

まず、自己紹介をされた。東京生まれ。居酒屋で酔っ払いに囲まれて育った。九州大学卒。沖縄中部病院で研修。離島医療に従事。米国で家庭医の研修を受ける。2008年手稲渓仁会家庭医療センターで活動。19床の有床クリニック(ホスピス・ケア)で、年間135名の看とりをしている。看取りの際にモニターは付けない。入院してから食事を摂るようになる患者も多い。明るい雰囲気である。内科、小児科、産婦人科を標榜し、家庭医養成と地域づくり。在宅療養支援診療所でもある。医療連携、健康な地域づくり。親子三代で受診する家族もいる。地域医療への貢献も目指す。

クリニックのミッションは「ひとりひとりの生き方を尊重し、地域の力をあわせ、温かみのある医療とケアを提供する。」である。ここで手稲家庭医療クリニックのある日の外来を紹介。すい臓がん末期、不安障害、妊婦健診(DVのリスクが高い)、4か月小児の予防接種(相談の切っ掛けになる)、11歳児の発熱・咳(喘息の管理・禁煙指導)、喘息の聾唖者(配偶者の死の悲しみ、知らない世界、コミュニケ―ションの難しさ)。

家庭医・家庭医療とは

  幅広く診療する

・人生の始まりは母親が「妊娠を考えた瞬間」:葉酸摂取、妊婦健診、体重管理

・人生の終わりは「患者の死」とは限らない:grief careの大切さ

・診療科・臓器にとらわれない診療

・セッティングに応じたギアの切り替え

  攻める医療

medical ecologyのどこを診るのが家庭医か

・予防医療とヘルスメインテナンス

・「病院に来なければ始まらない」とは言わない

  アクセスの良さ

  複雑な状況に対応+多職種連携

  現場に応じて変幻自在

・足りないものを埋める

・地域への根のおろし方

・困っているところへ人を出す

これまでの道のりをさらに具体的に話された。初期研修は野戦病院のようなところで沢山の患者を診た。卒後3年目の離島経験。大事にされて居心地がよかった。米国Family medicine residency2003年、先輩が道筋をつけてくれて米国へ行くことになった。5年間研修した。

家庭医になって、「何でも屋」であること、「継続性」が重要、「へき地医療に関わる医師のキャリアプラン支援」が必要、「家庭医養成の重要性」に気づいた。

公衆衛生修士として「地域の健康という視点」で、「公衆衛生の方法論」を用いて、「家庭医療の位置づけ」をしっかりとして、「医療・福祉・介護の連携」を模索したい。

「患者が望むこと」はいつもシンプルである。すなわち原因の追及、体調を治してほしい、等。風邪の患者さんを風邪の診療だけで終わらせない。「二歩先を読み、一歩先を照らす」患者さんを助けたい。仕事に誇りを持ちたい。成長し続けたい。

ロールモデルやメンター(自分を理解、先を進んでいる、成長を助ける、尊敬に値する)に出会うことが大切。

最後に学生たちにエールを3つ送られた。「自分のすることを愛してください」「置かれた場所で咲きなさい」「世界は変えられなくても自分は変われる」

 90分授業になったことで、事例についての解説が詳細になり、学生たちにとっても家庭医療の本質を理解する助けになったようだ。(山本和利)