札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年3月25日金曜日

人身売買

『告発・現代の人身売買 奴隷にされる女性と子ども』(デイヴィッド・バットストーン著、朝日新聞出版、2010年)を読んでみた。本書は、世界各地にある拉致、売春、強制労働等について告発した本である。

アジアで性産業に閉じ込められている子どもや女性、インドで強制労働させられる家族、アフリカで誘拐されて兵士させられた子ども、ヨーロッパの性産業シンジケート等の話が記載されている。

本書は、第1版の一部と最新の2版が翻訳されている。翻訳者が交渉して、2版でカットされているスレイ・ニアンとピエール・タミのエピソードを掲載している。このことによって人身売買の悲惨な状況がヒシヒシと伝わってくる。最後が悲惨な状況を乗り越えている分、少しの救いもある。

著者は作家という枠を超えて、NOT for Sale(人間は売り物ではない)の活動家になっている。本書には我が国の状況が書かれていない。訳者によると日本は到底優等生とは言い難いそうだ。性的搾取を目的に外国人女性を入国させて、自由を奪って売春や風俗産業に従事させるケースが後を絶たないという。また、児童ポルノの製作、流通、所持に対する容認度が甘いし、日本人男性による東南アジアへの売春ツアーも下火になっていない。

まずは事実を知ること、そして声を上げることが大切だ。(山本和利)