札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年3月3日木曜日

海外帰国者の発熱

2月にバリ島から帰国後の30歳代女性。帰国2日目、悪寒を伴う発熱が続くため近医を受診。汎血球減少を伴う発熱のため入院となった。インフルエンザ陰性。咽頭発赤あり、咽頭周囲に口内炎あり。両耳介後部に直径1-2cmのリンパ節を触知。右大腿伸側に丘疹が点在。
この病歴からどんな病気を疑いますか。

病歴、身体所見からデング出血熱の疑いが高い。現地では蚊に刺されたという。バリ島旅行後の発熱では、デング熱を疑う必要があるようだ。点状出血もあり、診断基準からはデング出血熱の基準を満たす。特効薬はなく、対処療法で急場を凌ぐことが肝要である。確定するには25,000円かかる抗体検査が必要。

Dengue feverの症状は、発熱、頭痛、眼窩痛、筋肉痛、関節痛、皮疹であり、出血斑や点状出血、下血を伴うとデング出血熱となる。不顕性のことも多く、潜伏期間は5-8日。発熱は2-7日続き、発熱は二相性である。身体所見では比較的徐脈でリンパ節腫脹を起こす。皮疹は50%に見られ、麻疹や風疹のそれに似ている。胸水や肝腫大がみられることもあるそうだ。血液検査では汎血球減少や肝機能障害を起こすようだ。

海外渡航者の発熱には、日頃経験しない疾患も鑑別診断にいれなければならないことを痛感した。(山本和利)