札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年2月13日日曜日

北海道内科地方会

2月12日、第258回北海道内科地方会に参加した。
B会場の一般演題を聴講した。

呼吸器疾患。
■SIADHによる失神患者に肺門リンパ節腫脹があり、それを経食道的生検で小細胞がんと診断した事例。診断も日進月歩している。
■肺がん様の進展があり、剖検で胸膜中皮腫と診断された例。この例では血小板が上昇していた。

血液疾患。
■AML寛解中患者のトポイソメラーゼ治療後の治療関連白血病。まれであるが予後不良。多発静脈血栓症の若年女性にトロンボモジュリン(rTM)が奏功した例。ヘパリンは無効であった。
■まれな慢性活動性EBV感染症。肝脾腫、肝機能障害、汎血球減少、蚊刺過敏症の症状から診断された。化学療法で完全寛解が得られるのは難しい。

内分泌・糖尿病。
■糖尿病ケトアシドーシスと甲状腺クリーゼを合併した若年女性例。HbA1c;9.9%。抗GAD抗体陽性。発熱あり。インフルエンザ感染後である。眼球突出あり甲状腺クリーゼと診断。甲状腺腫大なし。ステロイド、βブロッカー、抗甲状腺薬を使用。1型糖尿病には甲上腺機能をチェックすべきというコメントあり。
■内科的治療抵抗性肥満患者への外科治療(腹腔鏡下袖状胃切除術)。174cm,160kg1。SASもあり。HbA1c:12.8%。術後1.5年で82kgになった。貧血や栄養障害はない。この手術はまだ保険適応ではないため自己負担が大きい。肥満手術は日本では年間90例。大分大学、東京大学、岩手医大で実施。
■高血糖(HbA1c:17.8%)に伴った橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis)。構音障害、歩行障害。リハビリで改善。無症状の1型糖尿病の19歳女性。HbA1c;4.8%。抗GAD抗体陽性。インスリン分泌は維持されている。外来経過観察中。まれにこのような症例報告があるそうだ。学校野糖尿病検診で発見される1型糖尿病は1名/10万人。
■糖尿病患者のスタチン治療中高TC血症にエゼチミブを追加した。LDL-Cが有意に低下した。患者主体のoutcomeではないので、ここまでする必要があるのか疑問ではある。
■速効性インスリン分泌促進薬とDPP-4阻害薬の併用効果。症例数が少なく「やった、効いた」のレベルの報告であった。

アレルギー・膠原病疾患。
■腎門部に腫瘤を呈したMikulicz病。プレドニン30mg/日で治療し糖尿病が悪化。HbA1c;10.8%。後腹膜線維症を疑った。IG4形質細胞が陽性。時間的、空間的多発性が特徴である。9.3%に悪性疾患が合併する(大腸癌やMALTリンパ腫など)。
■P-CHOP療法で皮膚硬化と間質性肺炎が改善した全身性強皮症。B細胞の活性化が関係か。リツキサンが著効したという報告が出てきている。
■壊死性リンパ節炎後(プレドニン30mg内服で寛解)に成人型スティル病を発症した事例。発熱、リンパ節腫脹、右季肋部痛と下痢。フェリチン高値(300台)。非対称性のピンクの皮疹あり。スティル病にしてはフェリチンが低いというコメントあり。パルボウイルス感染症の可能性を示唆。
■現局性の脂肪萎縮を示した皮膚筋炎。浮腫性腫脹の上肢。プレドニン内服後、パスル療法施行。皮膚硬結にMRIを施行し生検で確定した。若年型に多く、成人型ではまれ。
■メサンジウム増殖性糸球体腎炎を合併したシュグレン症候群。7割が間質性腎炎の合併である。

感染症。
■熱帯型マラリア。西アフリカに滞在。帰国後、断続的な発熱。咳嗽。CRP;2.5。マラリア迅速キットで陽性所見。塗抹標本からマラリアと診断。メフロキン内服で軽快。72時間後、マラリア迅速キットは陰性化した。
■結核病棟勤務のナース。クオンティフェロン陽性。ツ反が強陽性。結核菌は陰性。抗結核薬治療をしたが腹部腫瘤が増大(振り返ると治療による初期悪化と考えられた)。結核性リンパ節炎の診断に経食道生検が有効であったという報告。
■豚丹毒菌による感染性心内膜炎。腰痛、下腿浮腫・疼痛。胸部Xpで空洞あり。肺炎の治療を開始。アルコール多飲。齲歯が多い。CRP;7.6。血液培養検査でグラム陽性菌陽性。心エコーで僧帽弁に疣贅。それと別に喀痰から扁平上皮がん細胞陽性。心内膜炎のみ加療し退院となった。弱毒菌が検出された場合、免疫不全の患者背景を検索する必要あり。

一般演題終了後、専門医部会はスキルアップ『内科医に必要な救急救命の知識と技術』に参加した。企画を土田哲人氏が行い、橋本暁佳氏と河本一彦助教がサポートした。

橋本氏の講演ポイント
1)100回/分
2)乳腺を結んだ線上の胸骨を5cmの深さで圧迫
3)胸郭を完全に元に戻す
4)中断をしない(気道確保は後回しでよい、VF,VT例が最も頻度が高い、hands-only CPRでよい)
5)過剰な換気を避ける。

聴講後、3グループに分かれて参加者全員が上着を脱いで実習を開始。思ったよりもうまくできて、講師の方に褒められた。
続いてAEDの操作法。
ともかく電源を入れることが第一である。自動音声ガイドに従ってパッドを装着しソケットにケーブルを差し込む。胸骨圧迫を続ける。ショックボタンを押すときだけ患者さんから離れる。(湿布やテープを外す。そうしないと火傷する)。すぐ胸骨圧迫を再開する。1分の遅れが蘇生率を10%下げるそうだ。(山本和利)