札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年2月10日木曜日

思考する豚


『思考する豚』(ライアル・ワトソン著、木楽舎、2010年)を読んでみた。著者はその独自の生命観から生涯、世間から激しい批判にさらされた人らしい。アイルランド島の僻地に住んで執筆したそうだ。2008年にこの世を去っている。

豚と文学というとジョージ・オーウェルの『動物農場』を思い浮かべる。豚は他の何よりも人間自身を思い起こさせる存在らしい。

豚の性質を一言で表すと「群居性」である。接触を好む社会的動物である。豚は恐ろしいほどよく眠る。体を掻くための何らかの場所を必要とする。目印は「糞をする場所」である。草食動物の中で、日常的に何でも食べる唯一の動物が豚である。適切な食べ物を探す能力に長けている。豚の祖先と人間の祖先は同時期に同じように雑食性を辿ってきた。豚は鼻で地を掘る。その鼻の全構造は一本の骨によって支えられている。豚はきれい好きで繊細である。共食いをし、会話もするという。

豚が登場する文学や映画についての考察も興味深い。

食物禁忌の由来の記述は参考になる。
作物栽培に重点を置くようになり、植物性食品を動物に食べさせて、人間がその動物を食べるより、直に植物性食品を人間が食べた方が効率的であった。そうなると動物の肉は贅沢品となり、特別なときのみ食されるようになった。中でも贅沢な肉(豚)が仕来りの上で不浄なものとされ禁忌の対象となった。

豚についてこれだけ広範囲に扱った書物は少ないであろう。著者は象について考察した『エレファントム』という本も書いている。それを本書と同じ福岡伸一氏が訳している。あまり売れるとは思えないがよくぞ訳して出版したものだ。医学には全く役に立たないだろうが、豚について蘊蓄を傾けることができるようになろう。暇を持てあます方にお勧めする。(山本和利)