札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年3月8日金曜日

診療参加型臨床実習

37日、札幌医科大学で開催された「地域拠点と連携によるICT連動型臨床実習」

のシンポジウムに参加した。

筑波大学の前野哲博教授の「臨床実習を通じて形成される大学病院と地域の互恵関係」という講演を拝聴した。

□地域医療(community-based medicine)で活躍できる医師とは?

大きな病院には患者が選んで受診するが、町にはいろいろな疾患を抱えた住民がいる。様々な健康問題が発生する。「私たちが病気になったら診てもらえますか?」に応える。

common problemに適切に対応できること

・頻度の高いものはメネジメントまで

・頻度の低いもの・緊急度のたかいものは、早期発見、初期対応、コンサルテーション

・これをもれなくカバーすること

■予防医学、社会背景、地域包括医療にも適切に対応できること

□地域医療教育の現状と課題

・地域枠医学生の増加、68大学が採用。1349名の学生が地域枠。(7名に1人)国の政策である。

・総合診療専門医のあり方。地域で活躍する医師のキャリアになる。「地域を診る医師」の視点が重要である。地域のニーズを基盤とする。

□大学・地域循環型の地域医療教育システムの構築

■大学病院がなぜ地域医療教育に向かないのか?

・特定機能病院である。(三次病院で、金になる人を求める):気軽に行き成りかかってはいけない。日常疾患でかかってはいけない。(基本的に)遠い。

DPCである:治療方針を決めてから入院。クリツカル・パスに則って動く。初学者には向かない。

■病棟中心の臨床教育

・診断が既に着いている

・治療目的で入院している:生活から切り離されている。

・疾患が偏っている

・いつでも医療者の目が届く:家庭医での対応の仕方が判断できない。患者教育ができない。

■地域を含めた教育フィールドの確保が必要

・診療所に医師を派遣する、そこで屋根瓦方式の教育ができる。診療所長を臨床教授にする。4カ所。宿泊施設がある。

水戸共同病院:立地条件はよいが、倒れかけていた病院。筑波大学の教員がそこで働く。内科医は総合診療科に所属。人材育成・教育の拠点となる。この方式が広がって、このような形の大学教員が51名いる。

大学と地域病院の長所と短所を補い合う。

■大学と連携した地域医療循環システム

コンソーシアム、安定した雇用形態、良好な勤務環境、大学によるキャリア保証が必要となる。地域医療と医師のキャリアパスの両立が難しい。

□筑波大学の事例紹介

プログラム:

1年生で早期体験実習

2年生で在宅ケアカンファランス

3年生で地域ヘルスプロモーション、チームワーク演習

5年生で地域クリニカル・クラークシップ

・病院実習6週間、診療所実習1週間、地域医療実習1週間

□地域医療教育の充実にむけて

・大学・地域医療機関・行政・住民と医師を共有すること

  ・医師を集める最大のパワーは教育である。

・人を集めるには、明らかに頭一つ抜け出していること

  ・オーバーペースは失敗の元。

・成功する条件

  ・大学が「のれん分け」できる環境を整えること

  ・大学教員として全国公募できる環境を作ること

  ・処遇の問題:給料、兼業

この後、パネル討論

市立釧路市立病院高平真院長、留萌市立病院笹川裕院長、松前町立松前病院木村眞司院長。実習について各病院5分間プレゼンテーション。

Q;各病院での学生の役割。参加型にするには、リスクを負う。役割を教えることが大事。信じて任すことが大事。

Q:サテライト実習プラン。各地の実情に合わせて、診療所や多職種との連携を図ってゆきたい。別の職種の視点で医師を見ることが重要であろう。医学を勉強するところではない。そこでできる目標を決める。

 

筑波大学は大学が一体となって地域医療教育に関わっていることがわかる講演であった。札幌医大も負けずに頑張らねば!(山本和利)

 

 

2013年3月5日火曜日

NBMまとめの講義

35日、NBMまとめの講義を行った。

 
1961年 に White KLによって行われた「 1ヶ月間における16歳以上の住民健康調査」を紹介した。大学で治療を受けるのは1000名中1名である。これが患者の受療実態であろう。

一部割愛・・・。

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』に収録されている、診察室では「失行症、失認症、知能に欠陥を持つ子供みたいなレベッカ」、しかし、庭で偶然みた姿は「チェーホフの桜の園にでてくる乙女・詩人」という内容を紹介した。サックスは言う、「医学雑誌の支配的テキストは苦しんでいる人を必要とする。しかし、その人々の個別的な苦しみは認知されえないのである」と。

次にAntonovskyの提唱する健康生成論(サルトジェネシス)を紹介。病気になりやすさではなく、逆に健康の源に注目。健康維持にはコヒアレンス感が重要らしい。1)理解可能であるという確信「こんなことは人生にはよくあるさ」。2)対処可能であるという確信「なんとかなるさ」。3)自己を投げ打つに値するという確信。「挑戦してやろうじゃないか!」

医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介。
研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。

N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論はYou see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。

授業の後半は、ナラティブの話。6つのNarrative要素:Six C”を紹介。以下、映画、短編小説、総合診療外来で出会った事例を紹介し、学生諸君が担当医になったらどうするかを記載してもらう課題を出した。膠原病を考える者から、心理的側面を考慮する者まで様々であった。

学生さんの講義に関する感想文を読むと、大部分の学生さんには好評であった。この授業はNBMについてのまとめとしては有意義であったようだが、一番インパクトがあったのは招聘した患者さん達からの話であった。今の気持ちを忘れず、患者の背景も考慮することのできる素晴らしい医師になってほしい。(山本和利)

 

 

映画による医学教育


35日午後、NBMの授業の一環として映画を用いた教育を試みた。

はじめにシネメディスンの紹介をし、映画批評の概説を述べた。

その後「ドクター」というウイリアム・ハート主演映画の開始から終了まで123分間分を観てもらった。あらすじは、「恵まれた家庭と高い名声を誇る心臓外科医が、突然癌宣告を受けることで一転、一人の無力な患者になる。患者になってはじめて気づく自分の務める病院システムの事務的で冷たい接遇や医師の態度。家族と築けない良好な関係。そんな状況の中で、末期癌患者と出会い、新たな人生の模索を始める・・・」。

その後、映画を観て感じたことを小グループに分かれで話し合って貰った。重篤な病気に罹患しないと態度が変わらない医師のあり方や違和感のある病名告知のあり方等、たくさんの指摘があったが、全般的には医師のあり方について学ぶことができて有益であったという意見が大半を占めた。映画論的な批評も少なからずあった。医師と患者の立場によって白黒のコントラストをつける、患者視点のカメラワークの変化、音楽の使い方、対立する立場の浮き彫り、等。

医学生への態度教育の一つの選択肢になり得ると実感できた講義であった。(山本和利)

2013年3月4日月曜日

患者さんの病いの語り

34日、NBMの授業の一環として患者さんから患者体験を語っていただいた。導入・司会役は月寒ファミリークリニックの寺田豊医師。



学習目標は、1)患者医師関係についての基本を理解する、2)患者会の役割を知る。3)NBMの理解を深める、4)患者心理を理解し患者中心の医療を展開する、である。
 患者さん(patient:苦しみに耐えている人)からでしか学べないことがある。
説明一つで天国にも地獄にもなる。
患者の声を医療に活かす(患者の声が果たす役割)。
・医療の現実を知る
・病気に関わる社会、制度などの問題
・教科書にはない患者さんの生活、病気への思い
・物語として医療、疾患を見直す
患者の3つの声
1の声:従う声
2の声:求める声
3の声:向き合う声
伝わるようで伝わらない言葉もある。(頓服、耐性など)
患者会のいうものを紹介。
・当事者の会;がんの患者会、COML
・家族の会;がんの子供を守る会
・集団療法としての会;AA、断酒会、くろぱんの会(慢性疼痛)、レタスの会(拒食症) 等。
 
「患者会の、3つの役割」は、 1)病気を科学的にとらえること、 2)病気と闘う気概をもつこと 、3)病気を克服する条件をつくりだすこと、である。
患者会には、「セルフ・ヘルプ・グループ」としての役割 もある。
・病気の悩みを共有したい
・同じ障害を持つ人と話をしたい
・自分の経験を役に立てたい
・健康制度における修正要素ならびに「第4の柱」としてのセルフヘルプとして

セルフ・ヘルプ・グループの役割は、a) 問題の解決や軽減、 b) 問題とのつきあい方を学ぶ 、c) 安心していられる場所、環境を作る 、d) 情報交換 、e) 社会に対して働きかけをする 、等がある。

「がんの子供を守る会」から講師をお迎えして講演を拝聴した。
開始前に骨髄バンクの登録カードを配布。6歳で息子さんが発症。年末に腰痛、発熱を起こす。血液がんの疑いで入院。髪の毛の抜けた、満月様顔貌の子供たちが病棟を走り回っている。次から次に検査が続く。母親には検査の説明はするが、本人には説明がない。骨髄検査の大変さ(息子のわめく声)。痛みへの対応が病院により異なった。病名がわかった。医師から一対一で説明を受けた。急性リンパ性白血病(L1)であった。息子に病名を告知するときに、別の患者の母親から「がん」という言葉を使わないように言われた。「孫悟空のように3年修行が必要」と説明。抗がん剤治療を開始したら、翌日から症状は消失。約二ヶ月後に退院。幼稚園の会に参加。薬の副作用で顔貌が違っているので、友達がなかなか認めてくれなかった。6週間に1回の維持療法のため入院。よそのクラスの子にからかわれた。・・・・(割愛)

学生にはタイトルをつけて、ライフストーリーとして書きとってレポート提出してもらった。衝撃的、聴いていて涙が出てきた等、学生の気持ちを揺さぶる授業となった。(山本和利)


指導医教育WS

32,3日、札幌KKRホテルでの北海道医師会主催の「指導医のための教育ワークショップ」にタスクフォースとして参加した。前日、同会場で打ち合わせ。参加者は21名。今回は第11回目とのこと。

開会、役員挨拶、タスクフォース紹介後、奥村利勝旭川医大教授からオリエンテーション。各グループ内で自己紹介。尊敬する人、好きなTV,死ぬ前に食べたい食べ物などを披露。続いてKJ法を用いての「北海道における医師養成の問題点」を120分かけて話し合われた。最近の医学部教育について(CBT, OSCE)を紹介。北海道医療の特徴、卒後研修の問題点、医局の問題などが選択されて話し合われた。

昼食後、北大の川畑英伸氏のリードで「カリキュラム・プランイング 目標と方略」が行われた。課題として一次救急、医療連携、入院診療に必要な基本的手技、基本的外科手技が選ばれた。90分で、それぞれについての一般目標、個別目標、方略の完成度の高いプランが発表された。

続いて勤医協中央病院の尾形和泰氏のリードで「教育評価とアウトカム基盤型カリキュラム」が行われた。前のセッションで作った個別目標、方略の評価法を作成してもらい、さらにAGGMEの6つのコンピテンシー(患者ケア、医学知識、臨床実践からの学習と質改善、コミュニケーション、プロフェッショナリスム、システムを考えた医療)のうちの一つについての評価法を検討してもらった。コンピテンシーで評価された研修医の方が、医療安全上も安心して雇えそうだ。これがアウトカム基盤型評価とも言えそうだ。

夕食後「北海道における地域医療」と題したナイト・セッションで北海道庁の杉沢孝久医療参事と旭川医大野津司氏が講演された。斜里町立病院で内科を一人で背負っていたときの過酷な体験を話された。一人1分の外来診療を続けた後、入院患者70人を診る。北海道の町立病院は有床で救急が確保されなければならないことを強調された。質疑応答後、20:30近くに第一日の日程を終了し、参加自由の懇親会となった。

第二日目は、朝8;00開始。山本和利のリードで「フィードバックについて」、自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。

コーヒーブレイク後、野津司氏のリードで「プロフェッショナリスム」を行った。6つのシナリオを用意し、そのうちの割り当てられた2つをグループで検討してもらった。(dutyのないはずの休日の呼び出し、ステロイド筋注を要求するアレルギー性鼻炎患者、転院を勧めても拒否する患者、弁当付きの勉強会に強制的に集積を求める医局、ミスを繰り返す同僚への対応、医療崩壊しても動かない行政)

昼食後、北海道医療大学森谷満氏のリードで「参加者各自のミニレクチャーとそのフィードバック」を行った。私が関わったグループのテーマは、咳できたら結核?、「認知症が進んだ」は身体疾患の検索を、虫垂炎のCT診断、胸痛プラス1の法則、尿道カテーテル困難例、プレゼンテーション法、AMIの主訴は胸痛ばかりではない、消化器の手術、鉄欠乏性貧血を見たら子宮筋腫を疑え、小細胞肺がん、薬物投与量の計算法、循環器救急、心エコーの撮り方、医療費について、先天性風疹症候群、小児科医療の特性、超音波ガイド式内頚動脈穿刺法、ある患者の治療についての振り返り、乳がん治療の流れ、新臨床研修制度とは、であった。それぞれが巧みに白板を使って簡潔に得意ネタを披露された(今回はパワーポイントもあり)。その後、よいプレゼンテーションについて全体討論を行った。

WSの評価を記載してもらった後、参加者全員から1分間感想を述べてもらった。長かったが予想以上に面白かった、指導の大切さを実感した、WSの運営の仕方が参考になった、人間関係について考えさせられた、体系的なフィードバック法を知って生まれ変わって指導したい、地域医療の厳しい現状を知ることができた、指導についての不足する知識がわかった、女性医師の支援にも力を入れて欲しい、指導医に求められる能力に気づいた、積極的に参加できた、という意見が多かった。写真撮影、修了証授与後、散会となった。(山本和利)

2013年3月2日土曜日

診療録・臨床プレゼンテーション

 
2月28日、あっという間に今年度も終わりになります。

札幌も久しぶりにプラス気温となり、雪どけに春は遠くないと感じます。
今回は午後の2コマで臨床入門の講義として「診療録」と「臨床プレゼンテーション」についてレクチャーを行いました。
医師の仕事は情報処理の連続です。臨床では同時に何人もの患者が同時に対応する必要性があり、医師として必須のビジネススキルが、診療録作成能力、いわゆるカルテの書き方であり、医療プレゼンテーション力なのです。まず一般的にカルテと呼ばれる診療録ですが、実は和製ドイツ語都のことです。
明治のドイツ医学導入時に造語されたのか定かで無いのですが、本家ドイツ語圏ではPatienten-AkteまたはKranken-Akteと言い現代の英語圏ではmedical recordchartです。
患者の事をクランケと呼ぶことは現代の医療現場ではほとんどありませんが、未だに医療ドラマでは使われていたりしますね。

現代の医療において下記のような理由から診療録の重要度は増しています。

個人情報の価値化

個人情報の価値化

電子カルテ化

医療訴訟の増加

多職種協働(IPCO

主治医制からチーム医制へ

医師の専門分化と総合医的能力へのニーズ

現代の診療録はアメリカの医師L.L.Weed博士が。「患者のひとつひとつの医療の問題点に焦点を合わせ、解決を目指して医療チームが共同して対応する」事を目指して考案したシステムPOS: Problem  Oriented Systemに基づいています。これに基づいて考案されたのが、問題志向型診療記録=POMRであり、記載方法=SOAPです。医師による診療録の記載は,診療における思考過程(a process of thinking)に沿うべきで,収集可能なありとあらゆるデータ(data)を医療者共有の情報(information)に練り上げ,さらに,判断・解釈がなされた認識(recognition)への一連の流れが診療録において再現されなければなりません。良い診療録を書くことは、主治医、担当医のその時点での方針、判断が明瞭に理解でき、他の医師や医療職にとって、迅速に対応できる資料となります。学生さんには、私の経験した実例を元にして、カルテをまともに書かない(書けない)医療従事者は医療の労働生産性を低下させる、またチームと患者をリスクにさらす事を強調して伝えました。なぜなら難解なカルテによって医療チームが無駄にした時間は、即ち患者の生命に関わる時間であるからです。

後半は電子カルテのメリット・デメリットについて述べました。講義後のフィードバックには意外にも電子カルテ化のデメリットについての意見が多いのは驚きでした。電子化することによって、また現代人の面と向い合ってのコミュニケーションが電子メールやITサービスによって低下している事を学生さん自身も理解しているようでした。
休憩を挟んで2コマ目は臨床プレゼンテーションの講義です。日本人は人前でのプレゼンテーションがとにかく苦手です。日本は奥ゆかしい事が美徳とされる文化であり、幼少時から皆の前で自己主張する文化の西洋人からは背景から異なります。ですから、そのような文化の中で育った人が、医師国家試験に合格したから、いきなり臨床プレゼンテーション能力が身につくかといったら、そうでは無いですね。そのような中でも、なぜプレゼンテーション能力が必要かと言えば、それは医師が医療のプロだからです。プロのコミュニケーションとして、プレゼンテーション能力が重要になってくるのです。講義の最初にはプレゼンテーションについて2つの事例を元にアイスブレーキングをしました。講義最初にある学生さんに栄養ドリンクを渡し、何でも良いので皆にPRして欲しいとお願いしました。突然こんなことを言われて出来る人はほとんどいません。代わりに私がPRのプレゼンテーションを行いました。
次に簡単な実験です。学生さんを2人一組にして、3分間でお互いに自己紹介し。その後自分の相手を皆に紹介する他己紹介をおこないました。そして、1人の学生に行なってみましたが、案の定シドロモドロです。次に予め集める情報(年齢・性別。出身地・医師を目指した理由・最近の興味・自己評価など)の記載された用紙を配り、再度自己紹介と他己紹介を行なってもらいました。
私が上記2つのことから学生さんに伝えたかったことは、プレゼンテーションは技術、個人の才能や性格によらない、単なる技術だという事です。栄養ドリンクの詳細を知り、事前に準備しておけば、製品PRはできますし、聞くべきこと・伝えるべきことが予め分かっていれば短時間で患者情報をまとめ、説明することができるのです。プレゼンテーションにも型があります。相手の頭の中に知識の棚を作り、埋めていくプレゼンテーション能力は医師としての臨床能力の基本と位置づけられています。「Presentation is Everything」と私の指導医は教えてくれました。スポーツで言えば、「ルール」や「基礎練習」みたいなもの。身につけてやっとピッチに立てる、なのでできていないとお話になりません。
プレゼンテーションスキルを上げるには、まずカルテをキチンと書く事です。   
初診時の漠然とした情報を整理して、まとめる能力を身に付ける。これが、初期研修医のうちに身につけるべきことです。そして、その作業において親身になってくれる指導医のいる研修病院に行くべきです。研修医のうちは上手い先輩のプレゼンテーションを真似ることから始め、自分なりの型を身に付けるまでは、上級医からその都度フィードバックを受けることです。そういった病院を初期研修に選びましょう。
「型を真似て完璧に身につけてこその型破り」立川談志
プレゼンテーションは相手Drとの真剣勝負です。良いプレゼンテーションをしてくれた医師には自然と敬意が湧くもの。きちんとできる癖が付けば、将来患者紹介や転院搬送などの時には役に立つ事間違いなしです。プレゼン上手になると患者説明も上達します。れから医師になる学生さん達こそ上手になって欲しいと思います。最初は大変でしょうが、汗かきベソかき恥をかき、研修期間中にキチンと身に付けてほしいと思います。
今回の講義で診療録と臨床プレゼンテーションの基本を理解し、将来の実習、研修で医師としての武器にして欲しいと思います。医師としての基本的スキルを身につけ、日々実践できれば、その向こう側の患者さんを守り、ひいては日本の医療の底上げに繋がる。そんな願いを込めて講義をさせて頂きました。「今キミたちの能力は同じスタートラインに立っている、でも10年経ってこうした基本的スキルを身に着けている、いないでは次のステップのチャンスを得る可能性が変わってしまう」こういった能力は地味ではありますが、医師の能力としては大変重要な事です。こういった事を早期にマスターして、その上でさらに能力を伸ばせるかがその後の10年の伸び代に関わってきます。講義後に頂いた学生さんのフィードバックにはその事が伝わったと感じるものが多く、将来に大いに期待したいと思います。(助教 稲熊 良仁)

地域住民が医師を育てる

31日、東京の都道府県会館で開催された第二回全国地域医療教育協議会総会(第5回全国シンポジウム 地域推薦枠医学生の卒前・卒後教育をどうするか?地域住民が医師を育てる?)に参加した。

 総会前に世話人会が行われた。前田隆浩会長の挨拶後、総会。42大学に会員がいる。

 ■福井県高浜町。住民代表今井宗雄さん、高浜町和田診療所井階友貴医師の発表。

町内の医師不足により医療への信頼の低下が起こった。住民の無理解もあり、医学教育の充実(屋根瓦式教育、インターネット・カンファランス)と住民啓発(広報誌、医療フォーラム)を図った。

住民と医療の架け橋を目指して、200999日にサポーターの会を設立した。メンバーは31名。月1回の定例会を開催。医療者交流会を3回開催。地域医療フォーラムを6回開催。ホームページ、ブログで現状と活動を紹介。啓発用パンフレット、ドラマ仕立ての啓発用DVDを作成。救急受診チャートを作成し町内に配布。「住民の立場でできることを考え実行する」活動の3原則「無理しない、批判しない、消滅しない」地域医療を守り育てる5箇条「関心を持とう、かかりつけを持とう、体作りに取り組もう、学生教育に協力しよう、感謝の気持ちを伝えよう」

教育効果として1)地域医療の楽しさを知った、2)地域医療についてより深い理解が得られた、3)地域医療への関心が増した、4)モチベーションが増した。

 ■岐阜県揖斐川町。行政代表高橋真紀さん、揖斐郡北西部地域医療センター吉村学医師の発表。

地域で開催されている既存の集まり(健康教室、サロン、老人会、自主的な集まり)に、吉村医師と実習にきている学生・研修医を結びつける取り組みを紹介された。キ^ワードは「笑い」と「一緒にやろう」。

医師に講演を依頼したら、学生が講師であった。テーマ「インフルエンザ、認知症、転倒予防、薬の管理、死ぬなら何の病気がいい?」学生が入ることによって、血圧測定や寸劇が導入された。医師や保健師は見守っているが、最後の締めは医師が行う。一緒に食事を摂ると親近感が増す。最後は握手して別れる。とにかく面白い。学生が来ることで元気になった。一緒にやりましょうという気になった。自然に連携がとれるようになったが、地域の重要人物への根回しが大切である。

吉村医師から学生・研修医に教えている内容を紹介。心がけていること「その人を知る、理解する、役割と責任を持たせる、みんなを先生役に引き込む、地域全部が学びの場所、まず経験、その後声かけ、振り返り、患者さんの生活が目に浮かぶように、謙虚な態度、プチ成功体験が大事、無理しないで既存のものを利用」

医学生は100人教えて1人、看護学生は50人に1人、リハビリ学生・介護福祉学生は20人に一人揖斐に戻る、そうだ。種を植えないことには始まらない。学生に任せるにはちょっぴりの勇気が必要である。

 ■徳島県牟岐町。住民代表石本千恵子さん、徳島大学谷憲治教授の発表。

医師不足の現状や地域医療を取り巻く激しい状況を知り、地域医療を守る会を結成。「地域医療を考える」シンポジウムに参加。地域で仕事をする医師への感謝の気持ちを込めて、メーセージボードの作成、ありがとう弁当作り、ケーキ・バレンタインチョコ作り、医師との交流(三味線コンサート、阿波踊り)等々様々な活動を展開。その結果、医療状況がやや改善してきた。

■高知県馬路村・梼原村。行政代表木下彰二さん、町立国保病院渡邊聡子医師・高知大学阿波谷敏英教授の発表。(飛行便の関係で拝聴できず、後ろ髪を引かれながら席を立った)

医療者や行政だけでなく、住民のこのような積極的な活動が地域医療を守るのに重要であることを実感させる発表会であった。(山本和利)