札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年7月16日火曜日

医学史 EBM/NBM


7/11は第19班の「EBM」と第20班の「NBM」についての医学史の発表がありました。

まず第19班の「EBM」について。

Evidenced Based Medicine」はマクマスター大学のデイビット・サケットが1992年に広めた概念であり、簡単に言えば「根拠に基づいた医療を提供しましょう」ということである、という導入から始まりました。

その次に「EBM」の詳細について、第1ステップから第5ステップまでの解説。ただその中には第1段階の問題の定式化である「PICOPatient, Intervention, Comparison, Outcome」や第3段階の論文の批判的吟味(内的妥当性)、第4段階の患者への適応(外的妥当性)など専門用語がたくさん出てきており、聴いている学生には少々難しい(飽きてくる)雰囲気でした。

 しかし「EBMの実践」として、「ある受験生が風邪予防のためにあなたの医療機関を受診しうがい薬を希望した。あなたがうがい薬を処方する?それとも水道水でのうがいを勧める?」という具体的な設定でEBMを実践。あらかじめ自分達で文献を検索し、論文を吟味し、1番適応できそうな論文を根拠に受験生に対してアドバイスを行ってくれました。

 その後のファシリテーターによる質疑応答では、「適用した論文の参加者数は十分であったのか?」、「うがいをしない群、うがい薬群、水道水でうがい群ではそれぞれ健康意識が異なり、それによる差(バイアス)はないのか?」などの1年生とは思えない鋭い質問もありました。

 

 続いて第20班の「NBM」について。

Narrative Based Medicine」は元々EBMを研究していたトリシャ・グリーンハルが提唱した概念で、患者さんの話す物語りと医師の対話を大切にしましょう、という解説と、先のEBMとの違いからプレゼンテーションが始まりました。

 初めに「傾聴」、「あいづち」、「繰り返し」、「共感」などのコミュニケーションにおいて重要な手法を説明しいかに患者さんの「物語り」を引き出すかを解説。続いて「6C」として「Conversation:会話」、「Curiosity:好奇心」、「Circularity:循環性」、「Contexts:背景」、「Co-creation:共創」、「Caution:慎重性」というNBM6つの要素を説明してもらいました。

 そして「NBMの実践」として「寸劇」を披露。設定は50歳代男性の腹痛を訴える患者さん。まずは「NBM」を全く意識しないでの問診風景。これがいかに「味気ないか、冷たい感じがするか」を聴いている学生に観てもらいました。続いて「NBM」を意識した問診を披露。実はこの患者さん、知人が膵癌で亡くなっており、自分も膵癌でないか心配であったようです。手法としてのEBMも大切であるが、患者さんの思いも意識したNBMも大切であり、お互いは対立するものではなく、お互いに補完するもの、として上手にまとめてくれました。

 またツイッターを通して実際にグリーンハル先生から「忙しいとついつい忘れがちな概念だけど、でも大切なものだから忘れないでね。がんばって勉強するのよ。」とコメントまでいただいたようです。

 プレゼンテーション後の質疑応答では、「NBMは大切であるということがわかったが、実際の忙しい臨床現場では十分になされてないのではないか?」、「そのような忙し中でどうやって応用するのか?」など活発な議論が繰り広げられました。

 

 EBMNBMともに概念的なもので、臨床実習を全く知らない1年生には少々難しいかなと思えるようなテーマでしたが、1年生の今だからこそできる考え方・感じ方をしてもらいとても有意義な時間を過ごしてくれたようです。プレゼンテーションの2つの班の皆さん、お疲れ様でした。(助教:武田真一)