札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2013年7月22日月曜日

第8回札幌医科大学指導医養成講習会

 72021日、第8回札幌医科大学付属病院 臨床研修指導医養成講習会を企画し、チーフタスクフォースとして参加した。当日、同会場で715から打ち合わせ。受講者は46名。

まず三浦センター長挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利のリードで「アイスブレイキング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。各班にグループの愛称名を付けてもらった。本年の特徴として、趣味や身の回りのことを命名する班が多かった。

三浦センター長から「札幌医大の初期臨床研修」の講義。本年度の札幌医科大学の研修状況を中心に話された。

続いて北大の川畑秀伸氏の主導で「カリキュラム・目標と方略」を150分。従来型カリキュラムのミニレクチャー後、やる気のない研修医を想定して各グループで学習目標設定してもらった。内科、産婦人科、内科、小児整形外科等が選択された。その後、方略と評価についての作成作業をしてもらい、発表に移った。ここ数年Outcome基盤型カリキュラムでやってきたが、説明や理解が難しいという理由で従来型カリキュラムに戻して行った。

第一日の午前の日程を終了したところで、写真撮影となった。

昼食後、松前町立松前病院の八木田一雄氏の主導で「上手なフィードバックをしよう」のセッション。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。ここでは指導医としての質を上げることが目的なので、指導医役には、シナリオに沿った役つくりよりも、研修医への最良のフィードバックを実践するのがよいだろうという結論になった。

続けて勤医協中央病院臺野巧氏主導での「教育の評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医、シニア研修医、看護師長、看護主任、ソーシャルワーカー役)を模擬体験した。最後に、自施設で行っている360度評価を紹介された。自己省察の大切さを強調された。SMARTを紹介(Specific, Measurable, Achievable, Behavioral, Achievable)。単独で当直ができるかどうか判断するために行っている技能を観察する評価法のMini-CEXを紹介。

江別市立病院の日下勝博医師の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ3つを用いて2人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、いくつか自信作を発表してもらった。

「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道保健福祉部の石井安彦参事が講演された。今回は、道内の研修医の実態に加えて、専門医制度についての最近の動向が示された。

二日目、札幌医大精神科小林清樹氏から「メンタル・ヘルス」の講義を受けた。今回は取り入れて二回目講義である。研修医には様々な立場がある。新社会人、新米医療人、過労労働者、見習い医師である。失敗がトラウマ、不全感、雑用が多い、一貫しない対応等が原因となる。海外では看護師がストレスであるという報告がある。外科のプログラムでは、36%が研修と無関係な時間であった。4つのケア:研修医自身で、指導医による、病院全体の取り組み、専門家によるケア、が大切。
医療従事者に起こりやすい心理として、「燃え尽き症候群」と「あわれみ疲労」がある。日本の研修医は他国のそれよりメンタルの問題が起こりやすい。PHQ9で調べると20%が抑うつ状態であった。6年生大学の女性学生は自殺のハイリスクである。現代型のうつの紹介(逃避型、未熟型、現代型、非定型型)、これの中にアスペルが―障害が併存していることがある。30%の研修医が研修中に志望科を変更している。研修医のメンタル・ヘルスのためには、「気付く、支える、つなぐ」が大切。

続いて札幌医大松浦武志助教の主導で「症例からの学び方」セッションを行った。はじめにリスク・マネジメントについてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」(山本五十六)。その後、「歯科治療中に具合が悪くなった40代女性」についてヒアリハット・カンファランスを研修医に実演してもらった。文献レビュー「局所麻酔薬によるアレルギーの頻度はどの程度か」を調べた。「1%以下」さらにペニシリンアレルギーについても検索し、その結果を報告された。クリニカル・パール:リドカインによる本物のアナフィラキシーはまれである。局所麻酔処置はアナフィラキシー様の症状を起こしやすい。アナフィラキシーの診断には病歴が重要である。最後に自分の施設で振り返りセッションを行うにはどうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。

昼食後、東京北社会保険病院の南郷栄秀氏の「EBMの教育」。鼻水、くしゃみに対して薬希望で受診した38歳女性というシナリオでWSが行われた。PICOを作り、実際にコンピュータを使って文献検索して、「花粉症の治療(内服、抗ヒスタミン点鼻、ステロイド点鼻)」を評価してもらった。結果をRRR(RBI),ARR(ARI)で表現する。抗ヒスタミン薬は偽薬より29%改善する(RBI)。ABI:15%。NNT:7..点鼻ステロイドが最も有効である。日本のガイドラインには先に抗ヒスタミン薬を使うように記載されており、最新のエビデンスとは異なっている。
判断するときに、患者の病状と周囲の環境を考慮する。重症度、眼症状、眠気、コストを考慮する。医療者の臨床経験も参考にする。
研修医には検索することが難しい、その記載を読むことが難しい。印刷はしない(読まない、古くなる)。EBMは生涯研修の方法論である。最小の労力で、最大の効果を。

最後は札幌医大赤坂憲助教の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。参加者各自が得意ネタで7分間講義を白板で行い、そのやり方へのフィードバックをしてもらった。テーマは、婦人科の手術法、橈骨骨折、喘息、妊娠について、勃起障害、髄膜炎、CKD,子どもは成長し続ける、腹部大動脈瘤、痙攣重積、発作性心房細動、肝細胞がん、胸痛、小児整形外科、怖い薬疹、メラノーマ、パーキンソン病、病理検査の基本、放射線検査、性感染症、貧血、老眼、小児貧血、子宮頸がんワクチン、小児発熱、精神科の特性、イレウス、Japan Coma scale、大腿骨近位骨折、女性の下腹部痛、冠動脈ステント、腰痛、ショックの定義と分類、譫妄(薬が原因のことが多い)、船医、白血病、急性虫垂炎、胸がこわい、くも膜下出血、皮膚形成、急性冠症候群、喘息発作、ピロリ菌感染症、等であった。評価ではネガティブ・フィードバックが苦手のようだ。

総括として、参加者の感想をもらい、受講者代表に終了証を手渡して解散となった。来年度は順番を変えたり、ブラッシュアップしたりした企画をしてみたい。(山本和利)