札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年12月9日日曜日

身体疾患と不安・抑うつ

128日、北海道身体疾患と不安・抑うつ研究会に参加した。

 北守茂氏の「難治性過敏性腸症候群の3例」

10代女性、長期にわたる下痢と腹痛、不登校。試験で一番前の席で、下痢恐怖の予期不安。自己臭恐怖。

IBSは4型。下痢型、便秘型、混合型、分類不能。血便、発熱、体重減少がある場合には、器質的疾患の除外が必要。コロネル、トフラニールを処方。重症化するにつれて精神症状が目立ってくる。

20歳代男性。腹痛と予期不安。いじめの対象になるため学校ではトイレに行けない。バスにも乗れない。器質的異常なし。直腸感覚閾値が低下していた(これはIBS患者全般に当てはまる)。直腸生検でPost-infectious IBS。自律訓練療法。解決志向型作業療法(原因を追究しない)。就職できた。

30歳代女性。腹痛、水様性下痢、摂食障害、嘔吐、無月経。体重減少が著しい。家庭問題あり。筋力低下。点滴するが改善なく、点滴に不信を抱く。内視鏡で異常なし。解決志向アプローチで対応している。

IBSの治療

1.一般的アプローチ

2.心身アプローチ

3.認知療法(認知行動療法、絶食療法、催眠療法)、原因追究よりも人間関係の構築の方が有効である。

 井出雅弘氏の「過敏性腸症候群並びに慢性疼痛の心身的治療」

IBSのRome II診断基準を紹介。機序:脳腸相関。機能性胃腸症候群。
50歳代男性。広場恐怖を伴うパニック障害と下痢型IBS。予期不安が強く、電車に乗れない。薬物、支持的精神療法、暴露的接近アプローチ。桂枝加芍薬湯、イリボーを追加で徐々に改善。意外と漢方薬が効く印象を持っている。自臭症にトフラニールが効くことあり。

 慢性疼痛の治療:クロナゼパム(リボトリール)、アミトリプチン(トリプタノール)が効く。最近ではリリカ、トラムセットを処方することもある。注意を他へ向ける(現実生活優先)。

悪天候により予定の演者が到着できず、北見公一氏が急遽「慢性頭痛と不安・うつ」の講演を行った。

慢性頭痛患者は多い。薬を毎日、68錠を内服している。はじめは効いたが、だんだん効かなくなった。生理前に片側がガンガン痛む。謳気、光に耐えられず、暗い部屋で静かに寝ている。母親が頭痛持ち。不眠で肩に索状硬結、傍脊柱筋筋膜痛→三叉神経第一枝を刺激する。生活環境が変わった。これは慢性連日性頭痛である。(片頭痛の慢性化・変容性片頭痛)誘因:不眠、不規則、不安・抑うつ、心的外傷体験。

治療:
睡眠衛生指導、睡眠・悪夢の改善、セロトニンを増やす、予期不安を減らす、トリプタン製剤。薬物乱用頭痛。反跳性痛みである。常用薬を止めさせる。予防薬を処方する。(クロナゼパム1/2錠、アミトリプチン1/2錠)、発作時にトリプタン製剤。これらを患者にわかりやすく説明する。パンフレットも利用する。

過敏性腸症候群や頭痛に対して、一般的事項と講演者の豊富な経験を踏まえた有益な講演会であった。(山本和利)