札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年11月8日木曜日

EBM:治療編


118日、科学的な診断の仕方、治療閾値の復習から入った。その後、治療効果の指標について講義した。

論文を読むときに大事なことは、偶然ではないのか、バイアスがあるのではないかをチェックすることである。3つのバイアス(選択、測定、交絡)を説明した。

治療に関する論文を用いて、次の点を説明した。

エビデンスを正確に評価するためには,治療効果の指標を知らなければならない.そこで、いくつかの指標の計算法を示した.


 

D +

D -

Exposure +

a

b

Exposure -

c

d

相対リスク:Relative risk(RR) は治療薬の偽薬に対する比で表の文字を使って表すと(a/a+b/c/c+d)と表される.相対リスク減少率:Relative risk reduction(RRR) 1からRRを引いた値である.表の文字を使って表すと1-{(a/a+b/c/c+d)}である.絶対リスク減少率:Absolute risk reduction(ARR)は両群のリスクの差をとった(c/c+d)-(a/a+b)と表される.

 従来,臨床上の有用性を示す指標として,主にRRRARRが用いられてきた.現在でも,多くの権威ある医学雑誌の論文ではRRRが用いられている.

しかし,対照と比較した新しい治療法の有用性をRRRで表わすと,たとえば,最終集計時の死亡率が10%対5%も1%対0.5%も,同じように50%と表され,臨床上はわずかな差であっても大きな数字に置き換えられるため,読者に誤解を招きやすい.一方,ARRは純小数で表現されるため,個々の患者に応用しようとする場合に理解しにくい.

それらの欠点を解決するための指標がNumber Needed to Treat (NNT)である.NNTは1をARRで割った値をいう.対照となる治療ないし自然経過に加えて1例の効果を観察するためには,その治療を何人の患者に用いなければならないかという指標に置き換えられたことになる.

相対リスク(RR)はその薬剤の切れ味を表現している。自分の患者さんについて評価するときにはARRNNTを使う方がよい.そうすることにより,1人の患者を救うためにどれだけの費用と薬が必要なのかがより明確になる.NNTがマイナスのときは対照群より成績が悪いことを示している(Number Needed to Harm (NNH)と言う).

治療法の効果の評価の際には、相対リスク(RR)だけでなくARR,NNTも計算する癖を学生のうちから身につけて欲しい。

治療の論文を読むときのチェックポイント

1.よい論文か(以下の吟味点6つをチェック)

2.結果は何か( RR,RRR,ARR,NNTで考える、95%CI

3.自分の患者に適用できるか(特に論文患者と有病率に大きな違いがないか)

  吟味点は6つ

1.ランダム割り付けされているか?

2.経過観察は十分か?

3.割り付けどおりに解析されているか?

4.患者・評価者にマスキングがされているか?

5.割り付けは群間に差がないか?

6.患者は同等に扱われているか?

(山本和利)