札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年11月3日土曜日

地域包括医療

112日、松前町立松前病院の八木田一雄先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは地域包括医療の制度と理論である。

 
事例を提示。80歳の女性。息子夫婦と3人暮らし。脳出血、保存的治療。右片麻痺。肺炎を繰り返すので胃瘻造設。自宅療養を希望、というシナリオを提示。昔は、訪問診察、訪問看護、介護のサポートは保健師、介護は家族。今は問題リストを挙げる。ここでADLDEATHdressing, Eating, Ambulating, Toileting, Hygiene)、IADLSHAFT: Shopping, Housework, Accounting, Food preparation, Transport)を紹介され、それに沿って事例を分析された。これを基にサービス担当者会議。話し合いで決めた導入サービスを決める。ジョクソウ予防のため介護ベッドの導入。精神面のケアをし、退院、在宅療養となる。

超高齢化社会

高齢化とは:65歳以上の高齢者人口の総人口に占める率。高齢者は循環器系、癌、筋骨格系が多い。一人暮らし高齢者が増えており、認知症を有する高齢者が増加している(250万人)。特別養護老人ホームの入所申し込み者の状況:42万人が待機している。施設に入所率4%

介護保険制度[2000年から]8段階に区分される。市町村に申請。訪問調査+主治医意見書。認定審査会で要介護認定をする。

昔;市町村が決める。所得による違い。長期入院。医療費の増加。介護に向かない。という問題があった。

介護保険
現在:自立支援。利用者本位。社会保険方式。所得に関わらず1割の利用負担。保険料約4千円。2種類(第1号被保険者:65歳以上、第2号被保険者:特定疾患が対象)。特定疾患16種類。居宅サービス、地域密着型サービス、等が受けられる。訪問調査+主治医意見書(傷病、心身状況、特記、等を記載する。介護の手間、ケアプランに役立てる)、認定審査が必要となる。要介護認定、要支援認定。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務;毎月のケアプランを作る。一人39人まで担当できる。モニタリング、連絡の調整。

在宅療養を可能にする条件:入浴や食事の介護、介護に必要な用具、訪問診療、等。384万人が利用。

サービス受給者数の推移:脳卒中、認知症が多い。主介護者は配偶者、子、子の配偶者。女性が多い。

地域包括ケアの5つの視点による取り組み

1.医療との連携強化

2.介護サービスの充実強化

3.予防の推進

4.多様な生活支援サービス確保や権利擁護

5.バリアフリーの高齢者住居の確保

地域包括ケアシステムの持つ8つの機能

1.ニーズの早期発見

2.ニーズへの早期対応

3.ネットワーク

4.困難ケースへの対応

5.社会資源の活用・改善・開発

6.福祉・教育

7.活動評価

8.専門力育成・向上

その成果:1)寝たきり老人が減少する。2)高齢者本人も家族も安心して在宅ケアを選択することができる(50%が自宅で介護を受けたい)。在宅死:11.7%である。3)老人医療費の抑制に繋がる。

松前町の取り組みを紹介。
地域ケア会議を月1回。サービス担当者会議。ケアマネジャー連絡会。グループホーム運営会議。在宅医療;54名。週2回、1回7-8名。脳卒中後遺症、認知症、骨折術後が多い。臨時往診はできていない。在宅での看とりの体制が整っていない。

地域包括医療について、実践者からわかりやすく理論や制度について学ぶ貴重な機会となった。(山本和利)