札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年11月22日木曜日

11月の三水会


1121日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:2名。他:7名。

研修医から振り返り2題。

ある研修医。長引く咳の0歳児。扁桃腺培養で百日咳。急性胃腸炎後の低血糖の4歳児。ケトン陽性。アセトン血性嘔吐症。ノロウイルスとロタウイルスの重複感染。発熱、嘔吐、腹痛で受診した21歳男性。McBurney圧痛あり、虫垂炎の疑い。腹痛・便秘の81歳男性。腹部に腫瘤。排便で軽快。サバすし摂取後の眼瞼腫脹。ヒスタミン中毒の疑い。4日間続く咽頭痛、発熱の20歳台女性。ウイルス性(EB,HIVを考慮)。めまいが主訴の60歳台女性。Epley法で改善。前日からの臍周囲の腹痛を訴える50歳の男性。CTで小腸壊死。開腹手術となる。Non-occlusive mesenteric infarctionであったか。

80歳代女性。ある肺炎の一例。咳、喀痰。慢性C型肝炎、高血圧の既往。38.1℃、BP:94/64mmHg, HR;80/m, SpO2:92%, RR:16/m,呼吸音減弱。WBC;1200,Hb:10.7, PLT:10万、BUN:36, Na;128, K;2.9, CRP;13, TSH:42,D-dimer:1.6XP:左肺に浸潤影。胸水を認める。喀痰でグラムを施行し、抗菌薬を開始。甲状腺機能低下状態と判断し、チラージンも処方。降圧薬を中止した。喀痰吸引を継続。痰つまりが強く、SpO2が低下する。心肺停止となり、気管内挿管をし、ICUへ移動。喀痰からクレブジエラ菌を検出。敗血症が考えられた。一時的に蘇生したが、最終的に家族に見守られながらなくなった。クレブジエラ肺炎による肺炎と考えた。急激に病状が悪化したことに驚いた。初期データから敗血症への移行が予測されたにも関わらず、対応が遅れてしまった。早期にICUに入室させるべきであった。

クレブジエラ肺炎:重症化しやすい。院内感染症、免疫不全患者に多い。COPDなどへの2次感染も多い。高齢者では敗血症、死亡例が多くなる。抗菌薬耐性菌が増えている。カルバペネム系抗菌薬を使う。

クリニカル・パール;肺炎では重症度を判定し、予後不良例では速やかにICU管理とする。

コメント:肺炎というより膿胸であったのではないか。胸水穿刺をすべきであった。肺と交通しているのではないか。

ある研修医。入院症例。尿路感染症の80歳代女性。PEG後に症状改善。糖尿病、蜂か織炎。Afでプラダキサ、ロキソニン内服中であったが、胃潰瘍出血を起こした。抗潰瘍作用があるのは、PPIとサイトテック。風呂で溺れた高齢女性。両肺野肺炎、肺水腫と診断。非定型肺炎と心不全と診断し治療(クラリスロマイシンと利尿剤)で改善。溺れた原因は何か?風呂の中で失神したのではないか?AMIの可能性はなかったのか。失神の原因の大部分は心臓由来である。発熱、胸膜炎の高齢女性。喘鳴が続いている。SpO2が低い。拘束性障害であったが、結核はない。家族が自宅で看護できなくなった脳転移を来たした肺がん末期患者。膝痛の高齢男性。偽痛風と診断。心窩部痛あり、胃癌による多発肝腫瘍が見つかる。COPDが基礎にある肺炎。外来患者:腹痛主訴の患者、たまたま撮ったCTで腹水、肝臓委縮があり、肝硬変であった。血管や門脈奇形はなかったか?虫垂炎と診断し手術となった患者。

非ホジキンリンパ腫で緩和ケアを行った70歳台の女性。Af,嗄声で耳鼻科を受診し非ホジキンリンパ腫と診断された。化学療法を施行。放射線療法。気管切開と腸瘻が造設されている。皮下結節が多数。CTで気管食道瘻がある。皮下腫瘤多数。胸水あり。家族は早期の終結を望んでいる。

緩和ケア専門医はいない。利尿剤、フェントステープを使用。身の置き所のない倦怠感にリンデロンを開始。塩酸モルヒネを増量。腸瘻からIVH管理に変更。不穏もみられたか最終的に死亡。

コメント:最後にIVH管理にする必要があったのか。皮下点滴でよかったのではないか。経験を積んでくると、何もしなくなる傾向がある。(最後だけモルヒネの持続皮下注入くらいである)。

ニポポ卒業生が研究について相談のため参加。

30歳台女性。4年前に右の自然気胸。保存療法で軽快。今回、自然気胸の再発(50%の虚脱)。脱気のためチューブを挿入。翌日未明に呼吸苦。ドレナージから血液が洩れて来る。HR:120/m、BP:100/70mmHgSpO2:90,経過観察3時間後、HR:150/m,顔面蒼白。胸腔穿刺した。緊張性気胸であった。緊急手術で事なきを得たが、癒着が剥がれた怖い事例であった。

クリニカル・パール;気胸にドレナージをしても安心しないこと。

前回、報告した、数カ月かけて動けなくなった80歳代女性(プレドニン10mg、アザルピジン内服中。両下肢に紫斑がある。下肢の筋力が明らかに低下。WBC;20000CRP;20)のその後。血管炎、悪性関節リウマチ(リウマチ血管炎)であった。

今回は卒業生が参加してくれ、経験を披露してもらいながら、適切な指導をしてくれた。(山本和利)