札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年6月25日月曜日

入院患者の血糖値はどの程度が適当か


「入院患者の血糖値はどの程度が適当か」について勉強してみた。


最近の研究では、入院患者の38%が高血糖を示している。ランダム化臨床試験で、強化インスリン療法をしても死亡率は減らさない。逆に重篤な低血糖が増加する、と言われている。

       Kansagara D, et al. intensive insulin therapy in hospitalized patients: a systematic review. Ann Intern Med;2011154:268-82

では、31のランダム化臨床試験を分析している。

      ICUで強化インスリン療法をして患者の利益があるか?

      不利益があるとしたらどういうものか?          


プライリマリ・アウトカムとして1ヶ月以内の死亡率と入院率を検討している。

セコンダリー・アウトカムとして3ヶ月以内の死亡率、感染率、入院日数、低血糖をみている。

       結果

      有意差はなかった。RR:1.095%CI:0.94-1.07

      21%で敗血症が減った。RR:0.7995%CI:0.62-1.00

(研究により差がある)

      重篤な低血糖が6倍増えた、

この研究から得られることとして、雑誌EBMEbenezer Nyenweは次のようにコメントしている。

       入院患者の目標血糖値を80110mg/dlに設定するのは低すぎる。

       目標値は140-180mg/dlがよい。

       (入院患者ではMetforminの安易な使用も慎むよう警告している)


入院患者に関しては、血糖値を低くし過ぎないことが最近の動向のようだ。(山本和利)