札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年6月25日月曜日

日本PC連合学会理事長の記念講演

623日、札幌で開催された2012年度北海道プライマリ・ケア連合学会北海道ブロック支部定時総会に参加した。そこで日本プライマリ・ケア連合学会理事長の記念講演を拝聴した。演題は「日本プライマリ・ケア連合学会を取り巻く現実とこれからの方向性」である。参加者は約40名。
講演要旨

プライマリ・ケア連合学会の目標を紹介。「人々が健康な生活を営むことができるように地域住民とのつながりを大切にした、継続的で包括的な、保健・医療・福祉、および学術活動を行う。」

 日本は今大きな医療問題を抱えている。開業医はまじめな集団である。この学会員もまじめである。しなしながら、正義や善意だけでは何も始まらなかった。日本の医療状況はどんどん悪化している。これから本学会は戦略的やってゆく必要がある。

 ここで家庭医療の定義を紹介。間口を広げて、より質を厚くするよう目指す。誕生から死までの個人・家族を継続的診てゆく医療である。

 今ジェネラリストに対する言葉が混乱している。その混乱を収拾するために制度的な担保を必要としている。

 医師会はどこまで地域医療に手を差し伸べて来たのか。この学会が主幹になり得ないのはなぜか。戦略を考えてゆきたい。

 「プライマリ・ケア・スタイル」というものがある。この学会員はリックサックを背負って、服装に拘らない。お金を持たない。よく勉強する。インターネットに強い。ネットワーク作りがうまい。他の学会にはない雰囲気がある。他者をリスペクトする。この流れを尊重してゆきたい。

 今回はアライアンス委員会について説明したい。日本医師会会員は16万人。開業医と勤務医が半々となっている。専門医としては外科が最大で2万人いる。総合内科専門医が14千人。家庭医専門医は圧倒的に少ない。本学会の会員数は5788名。研修プログラム数は増えたが、参加研修医の数は増えていない。サブスペシャリティに総合医がない。

宅医療・介護が今後大きな問題となる。死亡者数が今後40万人増えると予想されている。専門医から開業医に移るとき、自分の得意分野の受診患者は少ない。それに対応できる施設は増えない。そんなマンパワーでこの状況を乗り切れるのか?

 この学会が主幹になるためには、現実を突き破る必要がある。次の2つを進めたい。

・プライマリ・ケア・スタイルの拡大

・高い専門性の維持


現実を見ながら、ちょっとでも良い方向に進んでゆこう。他学会の方々と手を携えてゆく。

日本の閉塞した医療状況を改革してゆこうという意欲の伝わる講演であった。(山本和利)