札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年6月21日木曜日

6月の三水会

620日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。大門伸吾医師が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修4名。他:5名。

研修医から振り返り4題。

ある初期研修医。外来患者のリストを検討。ブヨ刺症。呼吸苦。SaO2低下。エピネフリン皮下注をするかどうか迷った。コメント:アナフィラキシーとして、エピネフリン・大量輸液をすべきであった。排便を堪えていて失神し、交通事故を起こし、骨盤骨折の事例に遭遇。

21才男性。失神・四肢のしびれ。眼球結膜の充血。「針を見ると意識が遠のく」ため、検査をしぶる。しびれが消失したため、歩いて帰宅。後日、チルト試験で陽性であった。循環器科への受診につなげることができたことを評価。患者の診療に消極的になってしまったことを反省。

調べたこと:若年者失神では神経原性:6080%。QT延長症候群、ブルガタ心筋症も念頭に置く。最も診断に寄与したのは心電図であった。全例に心電図は必要。頭部CTの有用性は低い。頻度的には不整脈、出血、脱水、迷走神経反射が多い。コメント:過換気の事例には、過呼吸をさせないように喋らせること。初回発作例に安易に「過換気症候群」とラベリングしないことが重要。


ある研修医。小児科研修の外来リスト。ロタ胃腸炎が多い。細菌性腸炎は、原因菌としてはサルモネラ、キャンピロバクターが多い。これは反応性関節炎を起こす(リウマチに似る)。旅行者下痢症は抗菌薬治療。抗菌薬治療が必要なのは赤痢、チフスくらいか。最近のエビデンスを調べてみよう。

全身倦怠感、発熱を主訴にした18歳女性。体重減少(3kg/)、慢性咳で気管支喘息として治療されていた。鑑別診断として百日咳、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、咳喘息、逆流性食道炎、副鼻腔炎、等が挙がる。HR;100/分。下顎リンパ節に圧痛あり。頸部に圧痛があり。尿に細菌(+)。CVA叩打痛(+)、CRP;陰性→後日9.6。尿路感染症を考えた(セフトリアキソン治療)が、入院時に行った血液検査で、甲状腺機能が亢進した検査結果が得られた。亜急性甲状腺炎が考えられる。TSHレセプター抗体をチェックし、エコー、シンチを行おうとした。生理は最近あったと担当医には応えていたが、その後、検査で妊娠が判明。ウイルス感染→亜急性甲状腺炎→一過性の甲状腺機能亢進症、と考えた。

クリニカル・パール:若い女性をみたら妊娠を考える。性交歴を聴取するには、良好な医師患者関係が重要である。

妊娠を否定する問診項目:「普段通りの最終月経」「本人が否定」「本人が思っていない」を聞くこと。

ある研修医。外来症例。過換気で精神科通院している心筋梗塞であった39歳女性。胸部・頸部・口腔内の疼痛。心電図に変化がなかったが入院させた(以前にこのような患者がAMIであったから)。12時間後、トロポニンIが上昇。心臓カテーテル検査で#9が100%閉塞と判明。頸と臍の間の痛みの鑑別に心筋梗塞を入れること。

69歳の発熱、耳下腺腫脹を経験。

50歳代女性。腰痛。ベッドから転落し、腰痛。両側下肢のしびれ。うつ病、パニック発作、C型肝炎の既往。腰椎のMRIでL5の狭窄あり。コルセット、リハビリで対応。積極性が見られない。ある日、トイレ歩行中、眼球上転し、意識消失していた。蘇生術を施行。心エコーで肺高血圧所見であった。心臓カテーテル検査で肺塞栓症と診断され、血栓除去術を行った。

本例は非手術例であったが、肥満、腰痛で臥床しがちであった。その予防として早期離症、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、低分子ヘパリン等がある。臥床しがちな患者さんには、肺塞栓症の予防が大切である。ただし、内科患者については、はっきりとした予防ガイドラインはないようだ。リスクを計算するソフトはあるようだ。

ある初期研修医。糖尿病と診断された44歳男性。血糖値:350mg/dl。HbA1c;12.2%,BMI;17.アルコール多飲。インスリンで加療し、そのまま継続。抗体検査等からslow progressive IDDMと診断した。最近、低血糖気味である。インスリンの使い方を調整する。
調べたこと:抗GAD抗体はIDDM6080%で陽性。インスリン自己抗体;IDDM4090%で陽性。抗IA-2抗体;若年者で陽性なりやすい。

新しい研修医がさらに2名参加してくれた。今回は疾患に関する話題が多かった。発表する研修医によって内容も様変わりするのかもしれない。(山本和利)