札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2014年3月17日月曜日

患者の病の語り もう一つのカルテ




 

34日、NBMの授業の一環として患者さんから患者体験を語っていただいた。導入・司会役は月寒ファミリークリニックの寺田豊医師。

 

学習目標は、1)患者医師関係についての基本を理解する、2)患者心理を理解し患者中心の医療を展開する、である。

 

「患者さんの声を医療に生かす」という本を紹介。臨床では聞こえない声がある。耳を傾けてみよう。

 

患者さん(patient:苦しみに耐えている人)からでしか学べないことがある。

説明一つで天国にも地獄にもなる。

患者の声を医療に活かす(患者の声が果たす役割)。

  • 医療の現実を知る
  • 病気に関わる社会、制度などの問題
  • 教科書にはない患者さんの生活、病気への思い
  • 物語として医療、疾患を見直す
    「患者中心の医療」という本を紹介。
    疾患と病いの違い。病いの意味は?
     
    患者会のいうものを紹介。

  • 当事者の会;がんの患者会、COML
  • 家族の会;がんの子供を守る会
  • 集団療法としての会;AA、断酒会、くろぱんの会(慢性疼痛)、レタスの会(拒食症) 等。
    「患者会の、3つの役割」は、 1)病気を科学的にとらえること、 2)病気と闘う気概をもつこと 、3)病気を克服する条件をつくりだすこと、である。
     
    患者会には、「セルフ・ヘルプ・グループ」としての役割 もある。

  • 病気の悩みを共有したい
  • 同じ障害を持つ人と話をしたい
  • 自分の経験を役に立てたい
     
    セルフ・ヘルプ・グループの役割は、a) 問題の解決や軽減、 b) 問題とのつきあい方を学ぶ 、c) 安心していられる場所、環境を作る 、d) 情報交換 、e) 社会に対して働きかけをする 、等がある。
     
    自助
    拍手をやめない。形から入る。履物をそろえると心もそろえられる。患者さんの肘を持って歩くイメージ。
    自助の反対語は孤立である。
     
    もう一つのカルテ。患者さんへの思い。パラレル・チャートという。研修医時代のパラレル・チャートを紹介。患者と自己の物語をじっくりと振り返り、意味づけし、解釈し、再構築作業である。そして、自己の気づきを深める。
    病室にある
     
    「北海道 脊柱靭帯骨化症 友の会」から講師をお迎えして講演を拝聴した。
    最初の患者さんの話は「私とOPLL」。職業、病歴を紹介。49歳でMRIにより診断された。脊髄圧迫症状が急速に悪化し、ペンギンのような歩き方になった。茶碗を持てない。同時に父親の介護。誰に手術してもらうか?進行を止めることしかできなかった、最近治療法がいくつか発表されてきた。手術から6年たって、この病気と仲良く付き合っていくしかない。今、B型肝炎訴訟も戦っている・・・・
     
    2番目の患者さん。・・・洗濯物を右手だけで干す。髪を右手だけで洗う。手術のために生活の調整が必要であった。術後も症状が残る。(割愛)・・・歩行困難が出現。黄色靭帯骨化症と診断、手術。お金がかかった・・・麻酔科の薬の効果に感激。
     
    わかってほしいこと。見た目に障害がわかりにくい。やりたいのにできないことがたくさんある。
    受け入れる。できないことはあるけれど、すべてできないわけではない。    
     
    二人からのメッセージ
    「いつも患者のそばにいて、患者と共に病に向かい合い、患者が病と折り合いが付けれるように支える人でいてほしい」
     
    2限目。
    ナラティブって何? 患者の「語り」を通じて、患者の「思い」にアプローチしようとするのがNBMの実践法。
    語られざる物語を聞き取る。寄り添いながら聞き続ける態度が重要である。
    「なぜ」という問いかけが重要。人の心がわかる力が必要。相互変容してゆく覚悟が必要。
    医療に与えられている大きな特徴
    ・患者の人生の内奥への接近を許されている
    ・患者の物語がケアの一部になる。
    ・患者の経験にみみを傾ける経験によって、医療者は、そのケースに積極的に関心を持ち続けることになる。
     
    患者の語りと医師の語り
    ・説明モデルとは、「患者が思っている」と医師が思うことの一つの解釈であり、患者の実際の言葉を直接描写したものではない。
     
    読むこと、書くこと、省察することことを通じて、医療者は患者の病の物語の誠実な力強い読者となって、患者の苦境を意味のあるものにする。
     
    アンテナ感覚
     
    Illness is a foreign country.
    ・多くの患者はガイド、通訳を必要とする。
     
    学生には本日の講演についてタイトルをつけて、ライフストーリーとして書きとってレポート提出してもらった。(山本和利)