札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2014年2月24日月曜日

指導医のための教育ワークショップ




 

 222,23日、札幌KKRホテルでの北海道医師会主催の「指導医のための教育ワークショップ」にチーフタスクフォースとして参加した。前日、同会場で打ち合わせ。参加者は21名。今回は第11回目とのこと。

 

開会、役員挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利からオリエンテーション。WSの仕方の概要を説明し、アイスブレーキング。偏愛マップを使って、話し合いをして各班で他己紹介。その後、グループ名をつける作業。続いて森谷満氏の主導でKJ法を用いての「北海道における医師養成の問題点」を120分かけて話し合われた。北海道医療の特徴、卒後研修の問題点、医局の問題などが選択されて話し合われた。

 

昼食後、勤医協の尾形和泰氏のリードで「カリキュラム・プランイング 目標と方略」が行われた。カリキュラムとは?学習プロセスの解説。「アトロピンの心臓への機能をリストアップ」等の課題を個人で演習。教育目標の設定。分類(知識、技能、態度)とそのレベル。一般目標(GIO)と行動目標(SBO)。SBOsをすべて達成すればGIOを達成することができる。車椅子の使い方の例を提示。学習目標をつくる例を提示。「CVカテーテルの挿入」を提示。教育目標はただ作ればよいわけではない(RUMBA:real, understandable, measurable, behavioral, achievable)則って作る。教育目標はスマートに(SMART:specific, measurable, achievable, relevant, time-bound)。

学習方略の解説。学習の種類、順序、資源を具体的に示したもの。学習成果は、人に教えると90%、講義を受けると5%が身につく。学習方略を選択するときの選択の仕方。順序、方法、組み合わせ、場所、道具、時間、経費等を考慮する。評価の解説。「学習者は自分がどのように評価されるかによって学習態度を変える」すなわち、評価は人をつくる。研修方略の作り方の紹介。途中で形成的評価を入れる。研修分野別マトリックス表を使って、普段指導している科に研修医が回ってきたという設定で、指導医、研修医役に分かれて、ロールプレイ。やりたいことの多い積極的な研修医に、指導医が背景、研修できる内容を説明する。その後、研修医は過剰な希望を述べる。指導医はRUMBA,SMARTを意識して、研修医の希望をお互いが納得できる最終的な研修目標に修正する。課題としてそれぞれのグループでついての一般目標、個別目標、方略の完成度の高いプランが発表された。作った個別目標、方略の評価法を作成してもらい、さらにAGGMEの6つのコンピテンシー(患者ケア、医学知識、臨床実践からの学習と質改善、コミュニケーション、プロフェッショナリスム、システムを考えた医療)のうちの一つについての評価法を検討してもらった。コンピテンシーで評価された研修医の方が、医療安全上も安心して雇えそうだ。これがアウトカム基盤型評価とも言えそうだ。最近はコンピテンシーに代わってマイルストーンという考え方が出てきている。

 

続いて北海道大学の大滝純司氏のリードで「拡大する診療臨床参加型臨床実習」が行われた。FDを受講すると湧いてくる疑問を提示。これが正しいのか?根拠があるのか?正しい理論や方法はない!泥縄でやっている感がある。あるものは生き残り、その他は消えていく。学習とはどういうものか?「学習観」行動主義的学習観でGIO,SBOが開発。認知主義的学習観で行動主義への批判。知識の枠組みが変わってゆく。構成主義的学習観はすでに習得している知識と関連付けて解釈し理解する。最近では、社会構成主義は社会的文化的な背景や他人との相互作用などの社会的相互作用を通じて行われる。認知的徒弟制度。正統的周辺参加。状況的学習。専門家とは何か?反省的実践家(ドナルド・ショーン)を提唱。複雑で複合的な問題に立ち向かう。現場で学習する必要がある。理論と実践が大切。どうすれば参加型実習になるのか?モデル・コア・カリキュラムが10年前に導入された。CBT,OSCE後に実習に参加する。国際基準の認証を受けたものしか米国では受け入れない。日本の問題は臨床実習が短く、見学型である。72週の実習は大学だけではできない。東京医科歯科大学が先進的である。ここでビデオを供覧。学生が勤務に組み込まれている。「出来の悪い研修医」が増えると思ってもらう。プロモーションビデオを作った。ビデオの供覧。術後の発熱についての事例を供覧。発熱患者に起こった発疹でドクターコールの例の供覧。グループ討議。意見発表。人で不足が問題。学生が起こした問題について誰が責任をとるのか。Student doctor制度が開始される。研修医や学生に一度診られた患者は抵抗がなくなる傾向が出ている。屋根瓦形式が組めない。科によってさまざまである。実際は初期研修と一緒に動く。内科系ではかなりうまくいっている。我慢して34年続けると学生が研修医となり、楽にシステムが動くようになる。病院が生き残ってゆくためには、このような制度に乗ってゆく必要がある。病院の存亡を教育にかけるようにした。学生が疲れてしまわないか。メンタルヘルスの問題はないか?ナースの協力が必要ではないか。教育を柱にすることをナースと合意することが大変。多職種連携教育の重要性が叫ばれている。学生にどこまでやらせるのか?個人情報の問題。電子カルテへの記載をどうするか?

 

 

夕食後「北海道における地域医療」と題したナイト・セッションで北海道庁の石井安彦医療参事の講演があった。引き続いて天使病院の山本浩史氏の「市中研修病院での研修医の指導方法」の講義があった。質疑応答後、20:30近くに第一日の日程を終了し、参加自由の懇親会となった。

 

第二日目は、朝8;00開始。山本和利のリードで「フィードバックについて」、自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。それぞれが研修医、指導医役になりきってロールプレイが行われ、笑いの多いセッションとなった。

 

コーヒーブレイク後、札幌医大松浦武志氏の主導で「症例からの学び方 SEA手法を用いて」セッションを行った。はじめに成人教育理論についてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。定期的に時間内に行うことが大切。後期研修医がやってもらう。よくある病気でまれな経過をたどった症例。その後、「オペ室での出来事」についてヒアリハット・カンファランスを初期研修医に実演してもらった。足関節骨折の準緊急手術。麻酔上異常なし。喫煙歴あり、喘息症状あり。ベロテックを使用。喘息既往のある患者への麻酔について学習。全身麻酔で挿管を選択したが、ラジンジアルマスクに変更。指導医が導入。「喉を触ってみて」と言われた。聞き取りにくい状況。聞き返すことをせず、甲状軟骨付近を触った。突然、喚起不良になった。叱られて手術は終わった。

「触る意味があるのか?」意味がない。位置がずれることがある。「気管挿管との違い」不安定な気道確保。「喘息は麻酔のリスクになるか?」周術期合併症の頻度は1-2%。1か月以内の症状が大切。高齢者、慢性肺疾患、喫煙者、SAS,肺高血圧がリスクという学びを得た。最終的な総括として、「ラジンジアルマスク挿入時に頸部触診は無意味。喘息は1か月以内の症状。聞き返す勇気を持とう」最後に自分の施設で振り返りセッションを行うにはどうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。

 

昼食後、尾形和泰氏のリードで「参加者各自のミニレクチャーとそのフィードバック」を行った。私が関わったグループのテーマは、それぞれが巧みに白板を使って簡潔に得意ネタを披露された。タイトルは、皮膚科の基本、縫合、札幌の健康、浮腫、譫妄、CVカテーテル熱、胸痛、すい臓癌、急性陰嚢症、悪性腫瘍の意識障害、透析、自己免疫疾患に対する造血幹細胞療法、認知症、膵癌への抗がん剤療法、不明熱、透析と高齢者社会、脳外科の血管内治療、小児の救急対応、病棟急変、転移性骨腫瘍、乾癬について、であった。その後、よいプレゼンテーションについて全体討論を行った。

 

WSの評価を記載してもらった後、参加者全員から1分間感想を述べてもらった。指導の大切さを実感した、WSの運営の仕方が参考になった、指導についての不足する知識がわかった、女性医師の支援にも力を入れて欲しい、指導医に求められる能力に気づいた、積極的に参加できた、という意見が多かった。点数評価では第一日目よりも第二日目の方が高く評価された。写真撮影、修了証授与後、散会となった。(山本和利)