札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年12月8日水曜日

松浦武志先生着任!

12月1日より採用されることとなりました、松浦武志と申します。
簡単に自己紹介をさせていただきます。

1975年愛知県生まれ。医学部1年の時、旅行で北海道を訪れた際、オホーツク海を埋め尽くす流氷と、全面結氷した摩周湖の美しさに感動し、北海道移住を決意いたしました。その後学生時代に北海道を延べ11回旅行し、大学5年生の時には自転車で道内を30日かけて1500km走破しました。また、ガイドブックに載るような観光地はほぼ制覇し、行くところがなくなったため、通常の観光ではない山登りにはまり、大雪・東大雪・十勝・樺戸・天塩・利尻・礼文・知床・斜里など、日高山系以外はだいたい制覇いたしました。

現在は子育てのためなかなか山登りには行けませんが、山スキーを練習中です。学生時代は山岳部でもなく、自転車部でもなく、人と違ったことをしてみたいと思い、馬術部に所属していました。金持ち倶楽部のイメージがありますが、全くイメージとは違い、馬の養育費はすべて学生のバイトで稼いでおりました。バイトと、オガ粉と糞にまみれた学生時代でした。卒業にやや時間を要した大きな理由でもあります。

将来は、医師になろうと思った原点である、道東・十勝・オホーツク地方で、地域医療の最前線で診療がしたいと思っています。

これまで、通常診療の傍ら初期研修医や後期研修医の指導を主にやっておりましたが、自己流なところも多く、一度学問的に医学教育を勉強してみたいと思ったことと、いろいろな地域で実際に奮闘されておられる先生方と交流してみたいとの思いからこちらの講座にお世話になることにいたしました。

専門は特にありませんが、日本内科学会の内科認定医・総合内科専門医を取得いたしました。得意分野は糖尿病と感染症です。
まだまだ若輩者ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。

2010年12月7日火曜日

ロスト・シティZ

『ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え』(デイヴィッド・グラン著、NHK出版、2010年)を読んでみた。

伝説の南米アマゾン探検家パーシー・ハリソン・フォーセットについて書かれた本である。フォーセットの時代のことと著者の南米での奮闘が交互の章に書かれている。フォーセットは謎の都市Zを発見するため、1906年から1925年までアマゾンを探検し、1925年の探検を最後にアマゾンで失踪している。その軌跡を追ったものである。

アマゾンの生物や植物の生態がすごい。毒虫、毒魚、病原体を媒介する蚊。こんなところによく住めるものだと思う。本書は、伝記であり、紀行文であり、サスペンスである。ブラド・ピットが映画権を取得したという。面白い映画が期待できそうである。(山本和利)

虫物語

『隠れた指/虫物語』(李清俊:イ・チョンジュン著、靑柿堂、2010年)を読んでみた。札幌市立図書館の新着コーナーにそっと置かれていたものである。

著者は、映画『風の丘を越えてー西便制』の原作者である。韓国では様々な文学賞を獲得している。虫物語を読んでいてはじめて、本作品が私の大好きなイ・チャンドン監督の撮った「シークレット・サンシャイン」の原作であることを知った。

息子を殺された女性が、宗教に救いを求める。犯人が逮捕され、やっと宗教を通じて心の平穏が訪れる。死刑執行を前にした犯人に会って、許そうと面会にいったら既に犯人は入信して、神に許されていた。一歩的な加害者の暴力に対して、被害者である女性は、絶対的存在である神に先を越されて許すことさえできない。どうすることもできない弱者としての人間の絶望を扱っている。

本書は30分で読める。イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」もお勧めである。(山本和利)

多様な意見

『「多様な意見」はなぜ正しいのか』(スコット・ペイジ著、日経PB社、2009年)を読んでみた。

複雑系の専門家が書いた「多様性」の謎に挑んだ本である。 副題は「集愚が集合知に変わるとき」である。久しぶりに出会った名著である。組織変革を目指す人には一読をお勧めする。

「4つの枠組み」が基本となる。観点、ヒューリスティック、解釈、予測モデル。

まず観点が重要である。正しい観点は難しい問題を簡単にしてくれる。革新するためには新しく多様な観点を生み出す必要がある。他分野の人の意見を入れること。例として、金属の並べたかを挙げている。メンデレーエフが金属への原子番号を導入することによって周期表を作り、それを見て元素の作る構造を目の当たりにする(はじめあった空白もそれを埋める新元素が発見された)。正しい観点によって問題が簡単になる。観点とは、現実から一つの内的言語への写像で、物事、状況、問題、出来事にそれぞれ固有の単語を写像させるようなものである。例:何進法、デカルト座標と極座標。

ヒューリスティックは解を探す方法ということである。誰かがある問題を違う風に観る。ヒューリスティック(近道思考)は希望を与えてくれる。新たなヒューリスティックは、観点が作り出した箱の中に予想もしない動きを生み出す。観点は解釈の基礎となる。例:緑色のケチャップ。ペプシコーラがコカコーラに対抗するため2Lサイズを採用

予測するにはモデルが必要である。観点に基づく解釈をカテゴリ化という。粗い解釈に基づく予測モデルではたいていが不正確である。

多様性が能力に勝る。多様な観点とヒューリスティックは、楽しさの原動力になる。一様の集団はたった一人の人を含んでいるのと変わらない。問題解決に取り組む組織は、多様な観点とヒューリスティックへ変わる多様な経験・訓練・アイデンティティを持つ人たちを探すべきである。

「多様性予測定理」、「群衆が平均を負かす則」多様な群衆は各個人の平均より必ず正確に予測できる。群衆はその中の人より良く予測できる。興味のある人は本書の熟読を。簡単な統計手法を用いて、証明している。

優秀な能力を持つが均一な集団だけで知恵を絞るよりも、意見の異なる多様な人が集まって意見を出した方が、名案がでるということである。地域医療がよくならないのは、医師や一部の官僚だけで考えているからではないか。自治医大の尾身茂氏が多様な国民を集めて、この問題を打破しようとしている。期待したい。(山本和利)

2010年12月6日月曜日

特別推薦枠学生の教育視察


12月6日、富山大学地域医療支援学講座・医学教育学講座一行6名の視察を受けた(有嶋拓郎教授、廣川慎一郎教授、山崎勝也准教授、藤浪斗助教、他)。
当教室が関わる特別推薦枠学生の教育の仕方やあり方について2時間半にわたり意見交換を行った。
どの大学も制度は作ったが、それをどう運用して学生を教育してゆくかは明確な方針がなく、現場での試行錯誤に委ねられていることを再認識されられた。
 終了後、熱心に討議をしすぎたため電車の時間を気にしながら慌ただしく視察団一行は旭川医大へ向かわれた。今後とも様々な方々と積極的な交流を続けてゆきたい。(山本和利)

暖かな医療


12月4日、北海道保険医会 創立60周年記念フォーラムで諏訪中央病院名誉院長鎌田實氏の講演を拝聴した。講義のタイトルは「日本の医療をどう支えるか」である。

「暖かな信頼が得られる医療」が基本である。医療崩壊と言われているが、まだ土俵際である。一瞬経済で世界一になったが日本人は幸せでない。政治のリーダーが出て来て欲しい。この10年政治家は言い訳しか言っていない。小泉政権は米国の真似ばかりしている。教育、医療、雇用、子育て、福祉に、暖かい血を通わせなければならない。

パレスチナへ行ったときの話。300名の子供がある年の正月に殺されている。12歳の子供がイスラエル兵士に狙撃され、脳死状態でイスラエルの病院へ収容された。脳死と判定され、イスラエル人へ臓器提供を父親が申し出た。その父親に面談してきた。心臓移植を受けた少女の家には、殺された12歳の少年のポスターが飾られていた。少女の母親は「感謝している」が、被害者の父親に「さぞ辛いでしょうね」という共感の言葉をかけた。少年の父親は少女に会えてうれしいが「喜びは半分だ。平和が来ていない。」少女は医師になりたいという。政治や権力では平和をもたらすことができなかったが、その可能性があるのは医療である。この話から言えることは、この臓器移植を通じて単に臓器としての心臓だけでなく心が移動している。

いい医療があると町が活性化する。病院があることでバランスが取れる。脳卒中、医療費が減る。じいちゃんが白血病の「たぬきのばあちゃん」に世話になった。医師と住民が大事にされたり大事にしたりすることが必要。お互いさま。生活者としてその人がやれていることが大事。患者は本音をなかなか言ってくれない。

鎌田氏にまだ髪がフサフサシテいる時代に、日本で初めてday careを始めた。暖かい医療が基本。日本に欠けているのは暖かな気持ち。「強くて、暖かくて、やさしい国、日本」を作れるはずである。自己決定をしない、周りの空気を読む、あやふやな日本人が多い。NHKで放送された訪問診療を扱った「心の遺伝子」を紹介。研修医の言葉:「鎌田先生は、受けながら包んでゆく」。住民が研修医に対して「暖かさを受け継いでゆきなさい」と伝えてゆく。住民が一緒になって医師を育てる。生きがいをもつことが大事。六花亭のバレンタイン・チョコレート(いのちをつなぐチョコレート)の話(収益がイラクへの薬の義援金となる)。癌で死んだ少女が絵を描いている。その少女の言葉、「私は死ぬけど、幸せでした。私の絵が他の病気の人のためになってうれしい」。自分の困難や不幸を横に置ける。

赤の他人の「両親」に育てられたことに対する恩・感謝が鎌田氏の原点になっているということが伝わってくる講演であった。夫婦で拝聴したが、二人とも元気をもらい、今後の生き方について大変参考になった。

写真は別の機会に撮ったものである。(山本和利)

2010年12月2日木曜日

偶然とは何か

『偶然と何か その積極的意味』(竹内 啓著、岩波書店、2010年)を読んでみた。

著者は長く統計学、経済学、科学技術論の研究に携わってきた。その著者が、確率論の導入によって「偶然」は克服されたという考え方に対して、自然の認識にしても人間の生き方としても正しくないという論点に立って書いた本である。

偶然と必然とは対の概念。必然でないことが偶然である。本書では偶然を科学と人間の現実生活の観点から言及している。ここでは起こったことについて、科学的・論理的に必然性が示されないような事象を偶然と定義している。

ニュートンの宇宙ではすべてが必然である。アリストテレスの4原因のうち、質料因(質の違い)、目的因(神の意志)、形相因(完全な形になるような秩序がある)は否定され、動力因(万有引力の法則)だけが近代科学では認められている。

デカルトの心身二元論:心が物理的法則に従う身体とは独立のもの(2つの原理が存在することになる)。これは一元的な決定論と矛盾する。ラプラスは、偶然は人間の無知から生じるが、「確からしさ」を知ることができるので確率の数学的理論を展開した。

偶然を発生させるメカニズム
1. 初期条件のわずかな違いが結果に大きな違いをもたらす場合。
2. 2つ以上の互いに無関係な因果関係が同時に働くことによって生じる場合
3. 微細な多数の原因として生じる連続的変動
確率
「多くの偶然現象が積み重なれば、偶然的な影響は互いに打ち消し合って一定の傾向が現れる(中心極限定理)」
「それでも残る偶然的な変動部分は釣り鐘型の分布になる(大数の法則)」
賭博者は必ず破産する。

論は「偶然にどう対処すべきか」、「歴史の中の偶然性」と続くが、自分自身の生き方に積極的に取り入れるべき視点に出会うことはなかった。(山本和利)