札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年1月21日木曜日

研究取材:下甑島(しもこしきじま)手打診療所


研究取材の第4弾である。

今回の取材地は鹿児島県にある下甑島手打診療所。2泊3日の日程である。所長の瀬戸上先生(Dr.コトーのモデル)とメールで連絡をとると、冬は天候不良で船が欠航になることがあると知らされる。さらに何と私が取材にゆく時期は高速艇が修理のため運航していなということが判明(船だけで片道3時間半)。鹿児島地方の天気予報を確認したところ、晴天ということで一安心。第一日目は鹿児島まで行けばよいので余裕の日程のはずであったが、出発当日、札幌が積雪50cmの大雪でJRのダイヤが大混乱となった。最寄りのJR駅までバスで行き、そこで運航状況を確認したら運休や遅延が多いため、多大な出費を覚悟してタクシーで新千歳まで向うことにした。ところが高速道路の入り口まで来てみると吹雪のため区間閉鎖となっており高速道路を使うことができず、やむなく最寄りの地下鉄駅に向かう。そこからなんとか札幌駅までたどり着いて、遅れている電車に滑り込んで空港にたどり着き予定の飛行機に乗ることができた。札幌を出発する前にすでに疲右往左往するという幕開けで前途多難である。

鹿児島市内で鹿児島大学のスタッフと懇親会。薩摩料理と芋焼酎を堪能。特別推薦枠学生の教育の仕方について情報交換する。鹿児島県には28の島があり、そのうち医師が常駐しているのは14カ所であるらしい。

翌日1115分串野木発のフェリーに乗船。3時間20分の船旅。時々船外で風に当たる。快晴、波1m。気分爽快。1435分に長浜着。事務長さん出迎えの車で、瀬々野浦の診療所、ナポレオン岩(ナポレオンに似ており下甑のシンボル的存在)、しんきろうの丘(診療所医師が往診の途中で蜃気楼をみたという記念碑が建つ)を回り写真撮影。診療所に向かう途中、予期せぬ通行止めに会い、行きつ戻りつしながら16時に手打診療所に到着。3階建て19床のりっぱな施設である。瀬戸上先生の診察終了を待ってご挨拶。白衣に草鞋をはいた足元が印象的である。元気みなぎる瀬戸上先生に施設を案内していただきながら入院患者の回診にお付き合いする。明日乳がんの手術予定の患者。その患者が肩関節の痛みを訴えるため急遽関節穿刺。慢性硬膜下血腫経過観察中の患者。腹痛で受診し腰椎圧迫骨折と診断された患者。魚の骨を詰まらせ喉頭浮腫で気管切開となった患者。人工骨頭置換術を希望する大腿骨骨折の患者。切除胃に胃ろう造設術を行った脳梗塞後遺症患者、等々疾患はさまざまである。先生に手を合わせて拝む患者もいる。付き添い・家族を含め、先生に向ける眼差しから信頼と感謝の気持ちが伝わってくる。その後、沖縄にある浦添病院の研修プログラムで1カ月研修に来ている2年目研修医にインタービュー。簡単に専門医にコンサルトできないという島の医療に接し、これまでの研修態度が甘かったこと、島で一人医療を任される責任が重大であること、自分の弱点再認識したこと、栄養師、薬剤師、理学療法士などいない状況で研修してはじめてチームスタッフに支えられていたことに気付いた等深い学びを得ていた。その時これまで島で研修を受けた医師たちの4年分の申し送りノートをあることを教えてもらい、頼み込んで拝読させていただいた。ここで紹介できないのが残念なほど興味深い内容であった(学び以外に、島・診療所・機器の案内、観光案内、食い物案内等)。

夜、瀬戸上先生の奥様の手料理を研修医と一緒にご馳走になる。伊勢海老・鯛・イカの刺身、伊勢海老のボイル、ホタテ・エビのフライ、鯛のホイル煮、伊勢海老の味噌汁、メロン等々。

20時、宿である竜宮の郷で海洋深層水を使用した風呂に一人静かにゆっくりとつかる(口に含むとしょっぱい)。

翌日朝7時20分発のフェリーで島を出る。夜、札幌着。

 

(山本和利)