札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2009年12月8日火曜日

研究取材:奈義ファミリークリニック


 

突然、思いもよらぬ研究費が入り「地域医療現場で研修医は何を学ぶか」という研究を立ち上げ、各地を取材することにした。

今回の取材地は1泊2日の予定で岡山県北部の奈義ファミリークリニックである。札幌から宿泊地の津山まで、東京経由で岡山空港、そしてJRと乗り継いで7時間かかった。岡山の土地勘がないため、以外に岡山から津山までの距離を遠く感じる。

朝、7時半に松下明先生にホテルまで迎えに来ていただき、車で30分の道のりを行く。途中、日本原病院・おとなの学校という関連施設を見学。先生はオープン病棟に入院している終末期の女性患者を見舞っていた。奈義ファミリークリニックに到着し、写真撮影。以前観たビデオに収められた施設のイメージとは若干印象が異なった。もっと広大な敷地にあるのかと思いこんでいた。朝の申し送りに参加させてもらう。指導医4名、研修医7名で運営している。見学した月曜日は5つの診察室が開いていた。うらやましい限りのマンパワーである。

松下先生の外来を見学。電子カルテに家族図が描けるのに感激した。電子カルテになるとコンピュータ画面を医師と患者が90度の角度でお互いに見つめながら面談する様式になるようだ。必要に応じて壁にかかっている耳鏡、眼底鏡を駆使して診療する。皮膚の脂漏性湿疹を癌ではないかと心配する男性患者には、デジカメで必要な写真を撮って、すぐにコンピュータに登録して所見を入力していた。基礎疾患があり肩関節痛を訴える60歳代女性。肩関節注射で劇的に改善した。その後、インフルエンザ予防接種を勧める。いかにも家庭医らしい診療である。検診の結果の相談をしたり、町の補助を受けられる肺炎球菌ワクチンを勧めたりしている。後頭部痛の検査を依頼したところMRAで脳動脈瘤が見つかってしまった70代の女性。帰り際に、くも膜下出血を起こしてしまった時の延命に関する事前指示をそれとなく伝えている。先生に対する親愛を込めた眼差しを感じる。

研修医の先生の外来も見学しようとしたが、癌疑いで経過観察していた患者さんへの癌告知であったため遠慮した。告知までの経過観察時間が少し長かったと研修医は反省していることが後のインタービュでわかった。この記録を入力しているとき、研修医の先生が私の翻訳した「患者中心の医療」を持参してサインを求められた。正直うれしかった。研修医2名にインタービュ。地域医療の現場で感じた良い点をたくさんの挙げていただいた。あえて問題点を探ると、職場から自宅が遠いこと、皆バラバラの診療所で働いている、皆それぞれの自宅同士が遠い、夜遅く終わるが皆家庭もある、などで一緒にお酒が飲めないとのこと。人数が多いため、4施設に関わっており一人で継続的の一人の患者さんに関わりにくいと聞いて、医師数が多いことの問題点を認識できた。

うどん屋で特上天ぷらうどんを奢ってもらい、長い帰路に就いた。

(山本和利)