札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年6月28日月曜日

専門医・認定医制度を考える

  6月27日、第1回プライマリケア連合学会学術大会。「専門医・認定医制度を考える」シンポジウムに参加した。亀谷学氏の司会で進行。

  伊藤澄信氏。前PC学会の認定制度担当者。これまで認定医1,100名。専門医80名。米国FM学会の制度を基本につくった。実技試験を実施した。経歴、事例報告。Modified essay questionによる論述試験。その後制度をいじらずに来ている。認定医取得者が家庭医専門医の受験資格者とするのは難しい。時限的に受験資格賦与を交渉予定である。本領域の専門医であり、他の基本領域専門医との併記はできない。2014年まで資格は維持。

 竹村洋典氏。前日本家庭医療学会の担当。発端は若手家庭医からの要求から始まった。学会後期研修認定プログラム設立を始めた。WSを定期的に行った。専門医試験には従来のPC学会のものに新たにポートフォリオを含めた。その上に病院総合専門医を設ける。プログラム責任者連絡協議会を結成した。生涯教育としてWSを企画。研修の場は診療所または小病院で家庭医機能を研修。総合内科、小児科の研修を必修。良質のジェネラリストを養成するために優れたプログラムを用意する。

  山城清二氏。前日本総合診療医学会の担当。病院総合医後期研修プログラム5年間の素案を作成。家庭医専門医の内容と重複が多いため、再検討した。家庭医専門医の上に2年間のプログラムを置く(病院総合医を特徴づける能力を追加したものを6つ)。現在、NANTO家庭医養成プログラムを作成。今後、プライマリケア応援体制の確立が重要。

  山下大輔氏。オレゴン健康医科大学家庭医療学科。海外の家庭医療専門医認定の歴史を解説。初期、19世紀、GPの時代。20世紀に入って急速な医学の専門分化。GPの急激な減少。1960年代:専門化進行、へき地医療危機。現在、新たな認定更新制度の開始。他の専門医が認定に関わっている。再認定制度、自動更新なし(試験あり)。自己評価、質評価が問われる(診療録の評価、半年後に再評価)。英国。ポートフォリオを用いてReflective practitionerとして生涯学習する姿勢を評価。受験者の負担料が30万円かかる。
今後の専門医制度の課題。医師個人の質の保証。社会のニーズ。専門家集団としての質向上。学問としての基盤の確立。再認定の扱い。既存開業医・認定の扱い。資金・時間・人材・実現可能性。

  岩本裕氏。NHK解説委員。患者サイドに立った要望。過去においては、国民皆保険が生んだ幻想。お医者さんはエライ!3時間待ちの3分診療。専門しか診られない医師たち。
  家庭医とかかりつけ医の違いが国民にはわからないだろう。専門医制度も信用できない。がん認定医の迷走(患者不在の論争)ぶり。未熟な技量の専門医による医療事故。ホームドクターが必要である。今求められている家庭医には、「安心を提携する」「ジェネラルな専門医」「健康な人も知っている家庭医」を要望。

  最後に討論がなされた,フロアーからの意見の一部を披露する。
「専門医の育成」:施設認定とプログラム認定が必要。アウトカムが重要。教育が存在しない場所に派遣されることがないようにすべきである。更新期間は5年。
「現役の医師が専門医になるには」:移行措置は必要。わかりやすくして国民の理解が必要。現場のニーズに合わせて融通を持たせる。質も大事だが、アクセスも大事。病院の勤務医をサポートする制度にしてほしい。初めは知識ベースの試験で数を確保する。生涯教育を充実させる。学会、日本医師会、厚労省の3つが話し合って欲しい。
「国民に認知されるためにどうあるべきか」:国民だけでなく、診療所の医師にも認知して欲しい。地域の医師と一緒にやってゆくことも重要である。99%が専門医である状況を変えなければならない。卒前教育を充実させる。制度を複雑にしてはいけない。米国の二の舞になっていけない。(FM vs. GIM).レベルを保証する制度設計。社会全体・国民の行動を変える。キャンペーンを行う。

 この学術集会をきっかけに、専門医制度がしっかりと船出することを願う(山本和利)