札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2009年4月6日月曜日

生まれて初めての手術

私はつい先日生まれてはじめての手術を受けたところです。1ヶ月前に右下腹部に睾丸を蹴られた時のような痛みを感じました。そのうち、立ったとき右ソケイ部に腫瘤を蝕知するようになり、ソケイヘルニアと診断され手術を勧められた次第です。手術自体は硬膜外麻酔と吸入麻酔のため記憶のないまま終わりました。しかしながら、経営や医療事故防止の観点から、経過がよくともソケイヘルニアのクリニカルパスに従って入院生活を過ごさなければなりません。そこで初めて36時間の絶食と24時間のベッド上安静、尿道カテーテルの留置を体験しました。患者さんの大変さを、身をもって体験できました。またこれまで3年間減量に努め、毎日の体重測定、ダイエット日記、妻や娘の厳重な監視にもかかわらず一向に減らなかった体重が、3日間の入院で見事に落ちまました。これも厳格で不自由なクリニカルパスの効用かもしれません。

初めて自由を束縛された生活を余儀なくさせられましたが、自由勝手に出歩いたり飲食したりするよりも術後経過がよくなるだろうという思いと、数日の我慢であることが遵守させたのかもしれません。そんな苦労のお陰で望外にも目標体重を維持できています。

入院病棟の見舞客の話し声の中に、札幌近郊のある病院が今年度から研修医の派遣を打ち切られ、中堅医師が疲弊して病院が運営の危機に瀕しているということが聞こえてきました。痛みに耐えながら眠れず朦朧とした頭の中に次のような地域医療再建策が浮かんできました。厳格で不自由なクリニカルパスを入院患者管理に適応するのと同じように、次のような政策を地域医療にも策定してはどうかということです。初期臨床研修終了後の1年間、夜間救急や医療過疎地、離島勤務など現在医師不足で苦悩している領域に約8,000名の医師を振り分けるというものです。 

このような短期間自由を制限することになる地域医療政策は、初期臨床研修終了医師たちには無謀な提案でしょうか。もちろん地域医療を再生するためには、政策的誘導のみならず現場でそれぞれが試行錯誤を繰り返すことが必要かと思います。臨床研修制度も見直しが行われると決まりました。北海道では、地域医療再建に向け、行政、医師会、大学関係者、市町村長会などが共同で対策を練るような企画が進行しています。「総合診療」能力を身につけた医師を増やし「地域医療」に関わらせるというスタンスを推進すべく活動してゆきたいと、生まれて初めての手術を経験した新年度の開始にあたり気持ちを新たにしております。

山本和利