札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月30日日曜日

地域医療教育の創造

1月30日、東京にある都道府県会館において開催された地域医療学センターシンポジウム2011に参加した。はじめに高久史麿自治医科大学学長の挨拶があり、梶井英治自治医科大学教授の趣旨説明があった。
地域医療教育の目標
1. 地域医療を担う心構え
2. 地域医療システムの理解
3. 基本的な診療能力の獲得

広島大学地域医療システム学講座の竹内啓祐教授から「必修地域医療実習のABC」。一般学生への地域医療実習に開始するにあたっての事項を述べられた。3つの病院で4泊5日の実習。5年生の臨床実習のひとつ(夏休みが1週間短縮)に組み入れられた。自治医大のプログラムを基本的に踏襲した。宿泊、食費、交通費、謝金、称号、パソコン環境、学生保険の問題を解決する必要があった。丸投げにしない。スタッフが週に2回現地で指導にあたる。健康教育の実習が困難であったが、その他は順調で学生の満足度は高い。往診実習が好評。地域医療への興味を持つ学生の比率は上がっている。協力病院へのお願いは「参加型で、愚痴らない、地域の魅力を伝える」等を願いしている。課題は、健康教育、実習受け入れ病院の確保、FDの開催、自治体・住民の協力。1月末に広島で行われた第39回医学教育セミナーとワークショック(MEDC)の報告をされた。最後に中国・四国地域の地域医療教育の内容を報告された。
質問;旅費やパソコンをどう捻出するか?地域枠の学生をどのように教育してゆくか。健康教育の実習は自治体の特定健診とタイアップするとできるかもしれない。診療所を含める予定はあるか?

津市西部の山間部に位置する三重県立一志病院の飛松正樹院長の講演「学生実習4年間の振り返り」。2万人が対象。家庭医療学の臨床実習を受け入れている。SPを使った医療面接。3-4名を受け入れ。3つの特徴があり、参加型、多様な地域ニーズを経験できる、多職種が関わっている、である。4年間を振り返って、学生に役割を与えるとコミュニケーション、プレゼンテーション、診療録記載能力は驚くほど向上する。多職種が積極的に関わってくれるようになった。患者さんが学生の診察を快く受け入れてくれる。学生は全人的医療をよく理解している。指導医にも生涯学習への動機付け、プロフェッショナリスムを見直す機会となった。課題として、家庭医の魅力をどのように伝えるか、学生の服装・態度、図書室、宿泊・食事などの環境整備、等があげられる。

青森県尾鮫診療所長の松岡史彦氏の講演「地域医療を受け入れる立場から」。実習に来る学生をみていて違和感を覚える。大学で教わった知識を現場でつまむようにして確認するだけでよいのか。Biomedical modelで対応していてよいのか。Contextやnarrative、時間、関係性に関したやりとりが重要なのではないか。地域医療をただ見せていてもその患者の関係性が気づかない。共感を持ってやりとりすることが大事である。モノの考え方を学ぶことが大事。教えるコンテンツに拘らない。ソフトな語りの中に、診療所で働く医師の強い矜持を感じた。

昼食前に、桃井医学部長が総括をされた。



午後は昼食をとりながらのWS「地域医療教育の維持・発展段階の諸問題」に参加。実習の評価方法、あり方、実習指導医、大学側の問題等について4グループに分かれて討議。
朝5:30に自宅を出て21:00帰宅。日帰りで往復9時間の旅程はさすがにしんどいが、参加者の熱い気持ちが疲れを吹き飛ばす。(山本和利)