札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月18日火曜日

患者主体の診断 その5

第4章は患者の物語:症状である。中盤。

症状の分類
正常な現象を主訴として受診する患者がいる(normal symptom)。患者は毎日便が出ないことや、正常なオリモノを心配する。そんなとき、次のような質問をするとよい。「そのめまいはあなたにとって大変な問題ですか?」「その頭痛で大変困っていますか?」「そのひどいおならで悩んでいますか?」等である。

医師を受診するための症状
若い英国女性の場合。気力が出ない(456:1)、頭痛(184:1)、胃部不快(109:1)、腰痛(52:1)、下肢痛(49:1)、腹痛(29:1)、咽頭痛(18:1)、胸痛(14:1)。

受診となる症状
血尿で受診する患者は泌尿器癌の可能性が高くなるが、排尿困難のような受診理由とならない症状が加わるとさらに可能性は増す。(9.9%から69%になる)
患者主体の診断とは言えないが、受診理由の症状とそうではない症状を組み合わせて診断をする研究が期待される。

閉経後の不正出血が癌であることを知っているのは50%,痛みのない乳房腫瘤が乳がんであることを知っているのは57%である。そして深刻な症状が出ても受診するのは12%である。

入場券‘ticket for admission’という概念がある。睾丸が腫れた男性は、何か理由をつけて受診した。それを入場券と呼ぶが、女性医師に本来の理由を恥ずかしくて言えなかった。

客観的な症状
医師には客観的にわかる症状が好まれる。しなしながら主観的な症状が多い。例えば、一般住民による調査では、関節痛(36.7%)、腰痛、頭痛、胸痛、四肢痛、腹痛、倦怠感、めまい、不眠、排尿困難感、歩行困難、動悸(18.2%)である。このような研究には時間もお金もかかる。

器質的原因のない症状
非特異的な身体症状では30-75%で診断がつかない。胸痛:病院よりも診療所では心理社会的原因が多い。うつや不安障害でもPC設定では身体症状を訴える患者が多い。器質疾患を除外するために検査を必要以上にしてはいけない。説明できない腹痛の68%は1年後には軽快している。胆石痛と胆嚢疾患は一致しない。倦怠感と貧血も一致しない。
実際、症状から検討すると、胸痛では11%、倦怠感では13%、めまいでは18%、頭痛では10%、腰痛では10%、腹痛では10%くらい器質的疾患の可能性があった。

医師主体の診断
これまでの医師主体の診断は、正確さに重きを置き過ぎている。正確さを追及しても必ずしも不確実性は減らない。患者自身が器質疾患では気付いていると、医師への信頼を損ねる。

疾患のない症状を疑うとき
・同じ症状での頻回受診
・たくさんの症状
・長期間続く症状による受診
・訴えの割に症状が軽いなど矛盾するとき
・常識的に理解しにくい症状
このような患者に出会ったら、自分の意見を述べて患者と今後の方針を話し合うことが重要である。(山本和利)