札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月17日月曜日

患者主体の診断 その4

『Patient-Centered Diagnosis』(Nicholas Summerton著、Radcliffe、2007年)を教室の勉強会で読んでいる。エッセンスその4。

第4章は患者の物語:症状である。

Symptoms;症状の語源は「通常の状態から落ちる」という意味である。医師を訪れる理由は症状があるからである。更年期障害の診断について考えてみよう。
50歳以降で、3-11カ月の無月経、ここ12か月生理不順の女性が来たとする。著者はFSHを測定すれば診断がつくと思っていたが、尤度比を検討するとホットフラッシュが3.2で、FSHは3.1である。複数の症状を加味した尤度比は28.5である。あえてホルモン検査をする意味がないことがわかろう。
女性の尿路感染症は排尿痛、頻尿の症状の方がテステープ検査よりあてになる。尿所見がなくても症状のある者を治療すると明かに症状が改善するという事実がある。
Clinical information and menopausal status
Clinical information Positive LR Negative LR
Hot flushes 3.2 0.7
Night sweats 1.9 0.8
Vaginal dryness 2.6 0.9
Patient’s Self-rating of going through the transition 1.8 0.3
FSH>24IU/L 3.1 0.5

身体診察所見の意味付け
肺疾患があると、起座呼吸があったときの評価が難しい。なぜなら心疾患でも肺疾患でも起こすからである。意味はある。起座呼吸がない時は、左心室機能低下を否定できる(陰性尤度比:0.04)

患者本位の医療面接
19歳女性。「寒気がする」といって受診した。その統合失調症患者におおまかな問診と身体診察をした。検査結果も異常なしであった。数週後、「寒い」といって再度来院したとき、スタッフに住所を確認するように懇願されて調べてみると、家から退去されられて外で寝ていたことがわかった。住宅が確保できたら症状は軽減した。

有効な診察
患者の価値観を探り、一人の人として尊重することである。また診察理由を明確にし、現在の問題に関連する背景、危険因子等を考慮するそして、共通基盤を構築する次にどうするか患者と一緒に進める。

格言に「私を不安にさせる患者には、不安がある。」、「私を抑うつ気分にさせる患者には、うつがある。」、私を混乱させる患者には、精神疾患がある。」

統計を取ると、医師は平均18秒で患者の話を中断させるが、そのまま話させても、患者の話は2分半しか続かない。そうすることで、受診の本当の目的がわかることがある。出だしは、開いた質問が大切である。

患者主体の問診
・疾患と病いの両方を探る
・全人的に理解する
・共通基盤を見出す
・予防や健康増進を図る
・良好な医師患者関係を構築する
・時間や資源を考慮し現実的に対応する

共通理解が重要
頭痛の研究で、症状が軽快することに最も影響するのは、患者の心配ごとを医師としっかり相談できたかどうかであった。
新たな症状が出現したとき、1カ月以内によくなるかどうかに影響するのは、患者が医師の意見に完全に同意しているかどうかであった。患者の価値観だけでなく、その限界を認識することも重要である。(山本和利)