札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月21日金曜日

日本の森があぶない

『奪われる日本の森 外資が水資源を狙っている』(平野秀樹、安田喜憲著、新潮社、2010年)を読んでみた。

制度がひどくて国民が迷惑しているのは医療だけかと思ったら、自然環境への対応もひどい。本当に腹が立つ。日本の国土が中国や欧米の資本によって買い漁られているそうだ。私自身離島、湾港などの辺境地の医療をどうするという目でしか見てこなかったが、資源という視点からも現在の日本の管理体制には問題があるようだ。

日本は世界一、土地所有者の権限が強い。森林の利用法も水の使い方も所用者の意のままである。そのため公益に沿った行動がとられない。(日本の医師の権利意識は世界一であろう。そのため地域医療が崩壊しようが、公益に沿った行動はとられない)。このような制度のため合法的なマネーの力による土地買収が進行してゆく。これが国土の辺境から広がってゆく。明治以来140年間で北海道の森の40%は破壊された。また日本の森林には測量図がない。48%しか地籍調査が終わっていない。このままでは森林の土地所有者が海外のグローバル資本になってしまう。

日本には国家資産を衛るためのルールがない。外国人は土地が持てないのがアジアの常識なのに、日本では可能であり、北海道の馬牧場は外国資本に乗っ取られている。「対馬の主要部分は韓国人によって買い占められている」。日本の官僚や政治家の何と能天気なことか。

山岳辺境や外海離島への関心を持とう。その解決法は、林業再生である。すなわち、辺境再生である。定住、所得補償、「村づくり支援員」、医療、介護が必須である。しかし、掛け声だけで終わりかねない(地域医療,然り)。

「安全と水はただである」「国境は安全で誰も犯しはしない」「資源や食糧はいくらでも海外で手に入る」といった日本人の地政学の欠如をなんとかしなければならないだろう。グローバル市場原理主義による森林破壊が始まっている。「自分が購入した土地は自分のものだ。その中で何をしようと勝手だ」でよいのか。(「自分の力で医師になったのだから、都会で好きな専門診療だけをして、何が悪い」と某医学生に言われて唖然とした)。

「過去への感謝と未来への責任」を今こそ考えなければ!医師は医学書ばかり読んでいればよいのか?!(山本和利)