札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月22日土曜日

愚鈍の怪物ゴーレム

『ゴーレムの生命論』(金森 修著、平凡社、2010年)を読んでみた。著者は『サイエンス・ワォーズ』などを書いており、科学思想史、生命倫理を専門としている。

ゴーレムとは人造人間のことであり、<善人の怪物>といったイメージが付きまとう。ゴーレムとは物言わぬ土塊であり、チョット間の抜けた人間未満の者と定義される。医療が進む中で人工臓器が進み、ロボットのような人間が増えることに対する考察を期待して本書を紐解いたが、その部分にはあまり紙面を割いていない。大部分ユダヤ教の世界で魔術の修得の証とされた人造生命「ゴーレム」について、宗教を背景とした解説が記載されている。

映画『エイリアン』シリーズにかなりの紙面を割いて言及しているので、映画愛好家には参考になるかもしれない。

他者や自己の「ゴーレム化」(相対的に愚鈍な人間)についての言及が私には参考になった。外国人や物言わぬ人・障害者などを自覚しないまま、相対的に愚鈍な人間とみなして、目に見えない境界線を引き、彼らをその向こうに追いやっていないだろうか。グローバル時代という旗印の下、米国人や英語堪能者は無自覚に英語をうまく話せない他者や弱者を「ゴーレム化」していないだろうか。(山本和利)