『五番目の女(上)(下)』(ヘニング・マンケル著、創元社、2010年)を読んでみた。
本書はスエーデンを代表する推理作家の警察官クルト・ヴァランダー・シリーズの第6作目である。スエーデン推理小説で有名なのは1960年代に書かれた「マルティン・ベック・シリーズ」と2000年代のスティーグ・ラーソンの「ミレニアム三部作」であろう。
これまで本シリーズとして「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」「笑う男」「目くらましの道」が日本語に翻訳されている(十作で完結となったようだ)。世界的に人気も高く英国やスエーデンでTV映画化されて、ここ1年間に日本のBS放送でもみることができた。
『五番目の女』のテーマは、女性への暴力とそれに対する復讐がテーマであるが、これまでの作品も殺人事件の解決に奔走する一方で、世界的な問題を浮き彫りにしてゆく社会派ミステリになっている。著者は行動する作家でもある。2010年5月31日のイスラエル軍によって攻撃されたパレスチナ救援物資運搬船に乗っていたというニュースにも取り上げられている(運よく難を逃れたようだ)。
社会問題を知るのにミステリが役立つことも多い。楽しみながら世界の問題を知ることができるので、時間のある方、ミステリ愛好者にはお勧めである。(山本和利)