『ことばの哲学 関口在男のこと』(池内紀著、青土社、2010年)を読んでみた。
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀がドイツ語学者の関口在男(せきぐち つぎお)という天才言語学者のことを綴っている。ドイツ語の勉強法が面白い。ドフトエフスキーの長編『罪と罰』のドイツ語訳を買って、辞書を片手にただただ読む。2年たった頃に文章の意味がわからないのに筋がわかるようになったという。ドイツ語以外にもたくさんの言語をマスターし、語学の天才ではあったのだろう。
哲学者ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインや内田百閒の話も出てくる。法政大学時代の関口在男と内田百閒との関係も興味深い。
行間から著者の関口氏に対する畏怖・尊敬の念がひしひしと伝わってくる。このような伝記を書いてもらえたら生きていた甲斐があるというものだ。(山本和利)