札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月24日月曜日

べき乗則

『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』(マーク・ブキャナン著、早川書房、2010年)を読んでみた。

1914年サラエボ。オーストリア=ハンガリー帝国皇子を乗せた車が道を間違えたことから悲劇が起こり、第一次世界大戦に突入した話が導入である。ソ連崩壊を1年前に予想できたか。阪神大震災は予想できたか。イエローストーン公園の大火災をなぜ予測できなかったのか。1987年のニューヨーク証券取引所の突然の大暴落は予想できなかったのか。

これらの現象を複雑系科学で、予想ができるかどうかを述べている。複雑系科学とは、「臨界状態」の普遍性を研究するのだそうだ。カオスは、単純な予測不可能性についてなら説明できるが、「激変性」については説明できない。カオス理論に欠けているのは、集団的振る舞いという重要な概念である。歴史にこの概念を敷衍できるのか。歴史には無数の力が働いている。「クレオパトラの鼻」が低くても歴史は変わらなかったというのが、歴史についての答えである。

読んで驚いたのは、「防火対策を講じるほど山火事は大きくなる」ということだ。適度にガス抜きをしないと、大災害に繋がるということらしい。自然に起こる小さな山火事はほっておいて正しく燃やすことが大事と(危険な枯れ枝を取り除いてくれる)。

我々は平均値思考やベル型分布に慣れすぎている。べき乗則においては、平均値に目を奪われると本質を見失う。

地域医療再生の激変を期待したが、そう簡単ではなさそうである。(山本和利)