本年は診断力を上げる勉強をすることにした。JAMAのThe Rational Clinical Examinationの訳本『論理的診察の技術』(竹本毅訳、日経BP社、2010年)のエッセンスを紹介したい。
第40章。
抗菌薬のない時代は肺炎にかかると20%が死亡し、菌血症になると死亡率が60%以上となる。
1984-1990年の文献
至適基準(gold standard)は胸部X線像。
身体診察所見ひとつだけでは肺炎の診断は難しい。crackleがあっても検査前確率5%が検査後確率10%にしか上がらないし、なくても2%に下がるだけである。頻呼吸、発熱、頻脈の陽性尤度比は2-4である。(呼吸数>30/分、心拍数>100/分、体温>37.8℃)
1995-2004年の追加情報
・臨床情報から肺炎として入院した患者では、入院当初なかったX線上の所見が3日後新たに10%に肺炎像を認める。
・臨床所見のみでは肺炎患者の抗菌薬のカバー範囲は決められない。
肺炎を疑ったら次の5点をチェックする。(事前確率を5%としている)(Heckerling PS文献)
・喘息がない
・体温>37.8度
・心拍数>100/分
・呼吸音の減弱
・crackles
その数が0なら1%以下、 1個なら1%、 2個なら3%、 3 個なら20%、4 個なら25%、5個なら50%である。
事前確率が5%でないと使いにくいので尤度比にすると、1個なら0.2、 2個なら0.6、 3 個なら4.8、4 個なら6.4、5個なら19である。
<咳、発熱で来院した患者が肺炎であるかどうか判断するとき>
1.一般住民の場合、事前確率を5%(検査前オッズ:1/19)とし、高齢者、免疫抑制状態、急激な増悪の場合は検査前確率を高めに修正する。健康な住民が対象の場合、検査前確率を低めに修正する。
2.(喘息がない、体温>37.8度、心拍数>100/分、呼吸音の減弱、crackles)の5項目を評価する。
3.その数が 1個なら1%、 2個なら3%、 3 個なら20%、4 個なら25%、5個なら50%である。(検査前確率によっては修正が必要である)
4.必要と判断したら胸部X線を依頼する(X線に肺炎像を認めめない者が10%いる)。
5.抗菌剤を使うことで得られる利得(B)が肺炎でない場合のもたらす不利益(C)の9倍と想定すると、治療閾値は10%[1/(1+9))となるので、チェック項目が3つ以上なら治療を開始する。(山本和利)