『人間の条件 そんなものない』(立岩真也著、理論社、2010年)を読んでみた。私は、手元に読む本がなくなると、市立図書館に行って理論社のこども向けに書かれた「よりみちパン!セ」シリーズを探すことにしている。難しいテーマを分かりやすく一流のライターが執筆していること、漢字すべてにルビがふってあることがその大きな理由である。
本書は、理論社のウェブ連載「人間の条件」がもとになっている。第1章「できなくてなんだ」で、障害のことに言及している。「自分のお尻を自分で拭かなくてもいい」ことについての障害者の方の主張が印象に残る。
途中、著者の経歴が独特の言い回しで披露され、書いた論文が漢字にルビがふられて提示される。本書の内容は、私にとってかなり難しい。中学生が理解するのは大変かもしれないが、相手が子供だからといってレベルを下げないところがすごい。
「機会の平等」は実現されたか。「格差社会」、「貧困」の再浮上、「搾取」等について中学生に語りかけるように論が展開されてゆく。基本は弱者の立場である。
最後に、著者の本の紹介がある。これで終わりと思ったら補遺がある。本書を読むことで、これまで当たり前と思っていたことに疑問が生じて来て、読者に考える切っ掛けを与えることになるかもしれない(この独特の言い回しが頭にこびり付いて離れない!)。(山本和利)