『海炭市叙景』(熊切和嘉 監督:日本 2010年)という映画を妻と一緒に観た。
函館出身の作家佐藤泰志の同名小説を映画化したものである。ロケ地は函館のためか、観客数も思った以上に多かった。
市民から1,200万円のカンパが集まったそうだが、観光をPRする映画ではなく、1980年頃のバブル期の市民の日常生活を描いている。函館の夜景や市電など馴染みのある風景も出てくる。
5つの話が時々交差しながら12月の函館の風景を背景に進んでゆく。造船所をリストラにあった青年とその妹、立ち退きを迫られている老婆、妻に裏切られ息子との対話が途絶えた市職員、稼業がうまくゆかず家庭に歪を抱える青年社長、息子と音信不通となっている市電運転手、等重苦しい話が映像化されている。これが北海道のみならず日本の現在の庶民の実態といえるのかもしれない。
重苦しい画面に目を離すことができず、2時間半が過ぎた。そこには空回りをしながら過ぎてゆく様々な人生がある。とても一人では生きていけない、そんな人生模様の中で動物や隣人・友人との寄り添う場面があると、人はホッとするのかもしれない。(山本和利)