第4章は患者の物語:症状である。後半。
症状のカテゴリー化
患者からの側面から見てみよう。動悸は16%の患者にみられるが、運動、情動、発熱に伴うものがほとんどである。職場でおこる規則正しい動悸は心臓由来の可能性が高い。動悸が長く続くほど、心臓由来の可能性が高い。
症状に関する3要素として、「患者」「時間」「環境」の側面から考えてみよう。
患者背景による症状
年齢、性別、人種、社会的ステイタスを考慮する。頭痛の場合、アジア人では56%が受診するが、非アジア人では24%である。
心筋梗塞でも、男と女で症状が異なる。男の場合、胸痛、発汗が多い。
65歳以上では、1/4で複数疾患がある。めまいの原因も様々である。医師と患者で下痢や動悸の定義が異なる。
認知能力
症状の43%は1年後には忘れている。4か月を過ぎると、症状出現の期日が曖昧になる。排便の変化については、6か月で一致率が下がる。そこで症状を思い出すせる工夫として、患者の身体状況と情緒とを考慮する。思い出すのに役立つような行事や出来事を聴き出す。識別できる症状についての記憶を分析する。現在から遡って症状を思い出す、等。
時間的側面
症状が一貫して続く患者は4%にすぎない。70%は2週間以内に改善し、90%は3カ月以内に改善する。めまいの28%は2週間以内に改善し、残りの50%は1年以内に改善する。救急を訪れた腹痛患者の大部分は数日以内に症状が改善している。髄膜炎の場合、古典的な症状はかなり時間が経ってから出現する。
環境的側面
地域によって様々な健康信念が蔓延っている。社会環境が症状の申告に影響を与える。妊娠を望む人と望まない人で生理についての訴えが変わる。清潔な診察室で訊くと汚い部屋で訊いたときより、健康であるという報告が増える。患者宅を訪問すると、症状を理解する手掛かりが得られることがある。(山本和利)