札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月27日木曜日

肺炎

『McGeeの身体診察学:第2版』の訳本(柴田寿彦訳、診断と治療社、2009年)のエッセンスを紹介したい。前回、JAMAの「肺炎」を紹介したが、比較のため読んでみた。予後についての記述が参考になる。(診断については、JAMAと同じである)

第29章。肺炎。

臨床的意義
・急性の発熱、咳、喀痰、呼吸困難を示す外来患者6,000例からのエビデンス。
肺炎の陽性尤度比は、ヤギ音;4.1、悪液質;4.0、気管支性呼吸音:3.3、打診濁音;3.0、呼吸音の減弱;2.3、体温>37.8℃;2.0、精神の;1.9、クラックル;1.8。
鼻水なし;2.2、咽頭痛なし;1.8

肺炎を単独で明確に否定する所見はない。

Laenenecの時代より、軽症が含まれる。古典的所見は発症後数日後に出現する。抗菌薬が身体所見を変化させた可能性あり。抗菌薬以前は発熱が7日間以上続くのが一般的であったが、今日では3-4日間しか続かない。

肺炎の診断には次の5点をチェックするのがよい。
・喘息がない
・体温>37.8度
・心拍数>100/分
・呼吸音の減弱
・crackles
肺炎の可能性は、その数が0なら1%以下、 1個なら1%、 2個なら3%、 3 個なら20%、4 個なら25%、5個なら50%である。

<肺炎の予後>
・ 30日以内の死亡率は10%。
・ 次の所見があると予後不良である。
 低血圧:尤度比;10.0
 低体温:尤度比 ; 3.5
・ 肺炎重症度指数(4項目)
 低体温、心拍数>100/分、呼吸数>30/分、収縮期血圧<90mmHg
 0個:尤度比;0.3、
 2個:尤度比;1.9、
 3個:尤度比;4.7、
 4個:尤度比;10.2
・回復期
 低体温、頻脈、頻呼吸、低血圧等は、2-4日で正常化する。(山本和利)