『思考のレッスン 発想の原点はどこにあるのか』(竹内薫著、講談社、2010年)を読んでみた。著者は、大学に所属しない物理学者で、肩書きはサイエンス・ライターということになっている。これまで講談社のブルーブックスに著者が書かれた内容を、私自身はときどき講演で引用している。
本書の内容を一言でまとめると、「ルネサンス風なんでも屋のススメ」である。小学校時代の海外経験、帰国経験を通じての落ちこぼれ感覚が実によく書かれている。大学・大学院へいってからの文系か理系かの進路を選択するときの戸惑い、物理と数学の違い等、面白く読んだ。
超一流の天才は、挫折を味わった時、自分の守備範囲だけでなく、別の専門分野の人の所へ行って勉強している、という。「越境」「境界人」という言葉も出てくる。挫折を味わった時、自分の関わる分野を広げて、生き延びてゆく天才の生き方。総合診療に関わる者を勇気づけてくれる内容が盛りだくさんである。
後半は、茂木健一郎氏との対談になっている。自分自身の進路に迷っている人、総合診療に進むべきかどうか悩んでいる若い医師に是非読んで欲しい一冊である。(山本和利)