札幌医科大学 地域医療総合医学講座
2011年2月1日火曜日
幻のU937
2月1日、留萌市立病院の笹川院長の講演『地域医療マインドと研究マインド』を拝聴した。札幌医大1,2年生向けの授業でもある。札幌医大時代は卓球部で活躍。研究生・助手時代に教授に内緒で行った免疫抑制物質U937研究についての苦労話があった。その後、成果がでずお蔵入りとなった。学位をとって道立病院へ赴任となった。振り返ると研究マインドとして筋道を立て辛抱強く失敗にくじけない精神が涵養された。人類への貢献に関われたし、学位取得で一区切りついた。
1993年、教授に留萌市立病院で赴任するようにいわれた。留萌の紹介。人口65,000人。生活習慣病(癌、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、認知症)の増加は全国と同じ。病院で死亡する率は80%。国の方針はベッド数の減少。どこで最期を迎えるか?
地域医療の現状。
留萌地区では医療難民の増加が問題となっている。高齢者が地元で最期を迎えることができない。自治体病院のベッド数は10%にとどまっているのに、へき地医療拠点、救急救命、災害医療センター、賞に医療拠点、がん診療連携拠点、を担わされている。救急、産科、小児科を担うことで約2億円が不採算となる。2008年から新ルールができて、各市町村が応分に負担してもらうようになった。2007年度8億の赤字が2010年に1億円の黒字となる。
「地域住民の声をよく聞き、地域医療マインドをもってよく考える」
広域医療連携が必要。一人診療所が多い。南北に150km。ER型救急である。専門医が待機して院内連携が重要である。
地震への備えが必要。チーム連携が重要。
連携の地域医療力アップが必要。10年前から在宅診療を継続している。予防ケアとして健康の駅でコホート研究をしている。3年が経った。カズノコの作用、インスリン抵抗性、等を研究。2月1日、病院横に在宅支援診療所・東雲研修診療所が開設される。
「住み慣れた地域、住宅で、できるだけ最期まで、自立した形で残りの人生を過ごせるように支援してほしい」という住民の声がある。「町がひとつのホスピタル」構想。在宅で社会性を保てるが、一方で家族の負担増や急変時の対応への不安等がある。「治す医療から支える医療へ」地域で完結できる連携医療を目指す。脳卒中地域連携パス。地域連携一生パス。慢性期の患者には多職種連携。福祉の連携。高齢化率が30%を超える。
キーワードは『連携』。インスリンパワー検診の話。この低下が生活習慣病である4疾患の発生につながっている。道内5大学が留萌で連携。途中、留萌の食材を紹介された。
トップダウンからボトムアップ。システムでなく、優れた医療人を育成。
早期に地域に接触し、勤務後も最新の知識・技能を研修し、学び続ける。
地域に望まれる医師像「病気・人・地域を診る」が求められる。笹川先生の精力的な行動力に圧倒される話であった。このような積み重ねがあって地域医療が再生してゆくのであろう。(山本和利)