『リーマン・ショック・コンフィデンシャル 追いつめられた金融エリートたち(上)倒れゆくウォール街の巨人(下)』(アンドリュー・ロス・ソーキン著、早川書房、2010年)を読んでみた。
米国の金融機関のトップについて、インタービュを基に書かれた本である。巨大な金融機関が潰されるか生き残るかを賭けた生々しい記録である。
生き残るために工作をする各金融機関の最高経営責任者(CEO)。銀行家トップを財務長官にヘッドハンティングする話。税金を投入して一企業を救済したことへの弁明を求められる財務次官。本業の詳細がわからないのに人事権を掌握する上司と首切りを恐れて危機的な状況を上申できない部下。
扱う金額が大きすぎて付いてゆけない面があるが、金融危機の中で生き残ろうとする者たちのあがきがヒシヒシと伝わってくる。米国の巨大金融機関の崩壊を救ったのが三菱UFJの出資であることが下巻で判明する。
一庶民の視点からすると、世の中を救おうとする動きではなく、個人の損失をいかに最小にするかという矮小な話に思えて、釈然としない気持ちで読み終えた。(山本和利)