札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年2月7日月曜日

患者主体の診断 その8

患者主体の診断学における病歴(Past Medical History)その2

 受診パターン
症候から基づいた診断は、大腸がんに対する下血などがあるが、癌に対する体重減少がプライマリ領域では代表的である。
さらに言えば、受診回数、市販薬の服薬状況、喫煙パターンなどの行動様式の変化が重要である。
特に英国のGPでは、しばらく受診していなかったひとが新たな問題で受診すると癌であるとされている(要注意!!)
自殺企図や小児の尿路感染は潜在的な診断価値がある。
自殺企図との場合、受診回数が増加している傾向がみられる。(受診回数増加しているときは自殺を考慮する!!)
小児の尿路感染は2.5年間で2.94回または21%受診が増加する。(受診回数増加しているときは尿路感染を考慮する!!)

 受診パターンからわかること
症状の経過が24時間以内で受診した呼吸器疾患の患者の場合は肺炎を疑う!
duration of illness  LR+
------------------------
<1 day         13.5
<4 day         2
>7 day         0.5

 共存的妥当性(concurrent validity)
病歴は診断を目的とするが、誤診、忘却などの認知的問題を有する。
良い例がOAにある。イギリスのGPのカルテから医師の診断結果と患者が使用する言葉と一致するのは偶然でしかない。
認知的バイアスは心理的、性的な問題があると報告されている。21歳までのうつの診断率は44%とどまる。
尿路系の外科手術の病歴は男性場合直接聞かなければ答えることは無い同様な認知的バイアスは以前の治療について語るときにはハロー効果も影響がある。つまり特定の医師や病院で全ての治療を受けた答えてしまう傾向がある。能力のある医師は誤診した時は条件が悪かったのだと思う…
病歴の共存的妥当性について評価する為に、ボストンの眼科受診したよくある慢性疾患について質問をとり、感度、特異度を算出した。
 あなたの本当の病気は?
sensitivity /specificity
-----------------------------------
arthritis 75 /66
CHD 64 /96
hypertension 91 /88
diabetes 84 /97
cancer 71 /89
use of aspirin 73/70
use of steroids 66 /96(ステロイド内服していますかと聞いても、内服している人が必ずしもハイと答える訳ではない?!)

 病歴の共存的妥当性
がんと心不全の研究では、がん全般の感度79%で乳がんでは91%、前立腺がんでは90%、肺がん90%、メラノーマでは53%との報告もある。感度が低くなるのは70歳以上、禁煙者、低学歴であった。
既往歴の聴取では、open-endedな質問よりclosedな質問がされる。ある研究では視覚的な補助があると女性のホルモン療法の服薬名を正確に思いこすことに役立ち、カレンダーを利用することも有効である。がんは15%,喫煙に関しては25%,アルコールに至っては36%が誤った個人情報であった。これらは親類や友人からの情報がより正確な情報にする為に有効である可能性はある。

 共存的妥当性を高めるには
近親者の情報は本人の情報との一致率は高いが親戚の情報はあまり信用出来ない
精神科疾患の一致率はκ値は0.58、認知症で0.41、アルコール依存で0.26、うつに至っては一致率は0.19と信頼性は低いものとなっている。配偶者や子供は大人になってからの情報は有効であるが、子供の頃の情報は有効ではない。親類からの情報はドーズレスポンス効果がありより多くの情報が正確な状態把握に役立つ。患者主体の診断学においては、親類などの情報は40%不確かではあるが、日ごとの状態変化や行動を把握するのには有効である。(寺田豊)