『和解する脳』(池谷祐二、鈴木仁志著、講談社、2010年)を読んでみた。脳科学者と弁護士との対談である。
多様性には2種類ある。Diversityとvariety。バラエティは要するにばらばらで有機的なつながりがない(闇鍋のような乱雑混合スープみたい)。ダイバーシティは表面的にはバラバラでもそこに有機的な繋がりがある。
裁判は確率と推測でしかなく、用いるのは帰納であるそうだ。
負の連合記憶。ヘッドフォーンがいいか悪いか、ペンと紙を渡してアンケートをとる。実はペンの評価が目的。ヘッドフォーンに対していい評価をした人は新しいペンより使ったペンをよいと評価する。駄目と書いた人はペンも駄目。
人間は罰を与える生き物である。自分のお金を使ってまで罰を与える。
和解をするときの究極の目標は、「相対的な快感」を作り出すことである。金銭の話は、結局快・不快、好き・嫌いの問題に行き着く。相手に感情を逆撫でされたら、たとえ大金でも受け取らない。一方、経済的には割が合わなくてもお金の裏にある「情」に、お金を出してくれるということに愛情や謝罪の意味を感じて受け取るというケースもあるようだ。
裁判の領域においても冷たい論理的な進行の仕方よりも、情のこもった納得を目指す話し方が重要であるということだ。(山本和利)