札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年2月19日土曜日

患者主体の診断 その11

第6章は身体診察である。中盤である。

診察室に入るところから観察することが大事である。まず歩行を見る。PMRや
Parkinson’s diseaseを疑う(Shuffling gait:LR+3.3、Difficulty rising from a chair:LR+1.9、Tremor;LR+1.4)契機となる。住環境の改善を提案することにもつながる。コンピュータの画面を見過ぎないこと!
・歯が20本以下であると、骨粗鬆症:LR+:3.4。
・喫煙者にClubbed fingerがあると肺がんのLR+;3.9。
・地域の高齢者をケアするとき、化粧と健康度に関連がある。口紅をさす、ドライアーで髪をすく女性は快復度が高い。

医師の観察能力は様々である。
・黄疸(bil>3mg/dl)を検出できたのは医師の70% でった。驚くことに7%の医師がbil>15mg/dlを検出できなかった。
・貧血を診断するのに、結膜蒼白はLR+:16.7で、手掌線蒼白はLR+:7.9であった。

患者主体の診断は、患者の目を通して世界を見ることでもある。臨床情報を選り分ける。身体診察をしながら考える時間を持つことができる。肛門診察が男性の尿路系の診断に役立つというエビデンスはあるが、ルーチーンに肛門診察をする意味はない。研修医も直腸診の訓練を受けていない。(山本和利)